ブリヂストン・グランテック

締結部

初期型

 3分割された中で、BB側に締結用の固定ボルトとバネが入っています(左)。ボルトの基部とバネの基部はチューブやや上端部でカシメによって付けられており、外せません(矢印)。ダウンチューブに繋がる中間部は中空で、この部分を回転させて折りたたみます。
 締結レバーの台座はシート側のチューブにあり、ここで押し付けて勘合しています。シートチューブ側の勘合部の先は細くなっており、BB側の外套の中に入ってバネに当たります。押し付けるとシートチューブ下端がばねを押し、解放時はこのばねの反発力でシートチューブが押し上げられます。

 初期型も分解できないかと相談を受けまして、挑戦してみました。シートチューブを下方から覗くと、下から17cm程度、かしめ部の下方あたり(赤矢印)にボルトが見えます。上方に出ているボルトはM8×1.25でボルト径は13mmになりますので、長い13mmBOXレンチを購入して回しましたところ・・・、見事に破断しました。真中の写真で黒く見えているのはワッシャで、後期型と同じように10枚程度のワッシャがかませてあります(右)。ボルトが破断しても上方に出ている部分はぐらつきもしませんので、かしめ部でしっかりと締結されているものと思います。 2012春に入手した車体は固着していなかったため、分解することが出来ました。
 なお、下から覗いたときに、ボルトの頭ではなくて、ナット締めされたボルトが見えることがあります。これは初期と後期の中間型のようで、外見は初期に似ていますが、下方の締結は後期と同じくナット締めになっています。なので引き抜きは上方へ行うようです。

 

破断したボルトです。破断した後も強固に癒着していたため、バーナーで炙って何とか外しました。癒着部は矢印の部分で見事に錆付いています。今回は破断したためボルトを上方へ引き抜く事が出来ましたが、通常は下方へ抜くようになるため、錆が発生したボルト部分を通さなければなりません。錆の状態によっては嵌りこむ可能性もあり、錆付いたボルトが綺麗に抜けるかどうかは個々の状態によりそうです。

 新しく手に入れた車体は固着が無かったため、分解できました。基部の構造ですが、「D」型に穴が開けてある5mm厚程度の部品がカシメの中央部に止まっています。ここに下からボルトが貫通しており、上部のナットを介して締結ボルトにつながっています。今回はたまたま分解できましたが、他の固体では接着されて固着しているのか、錆で固着しているのか、ゆすって外れるような状態ではありませんでした。なお、「D」型構造なのでボルトは回転できませんから、上記の様に下からボルトを回せば破断するのは当たり前でしたね。ボルトは1面が削られている特注品でネジ径はM8(1.25)×100mm、ワッシャは9枚あり、スプリングは分離できました。

 

 基部側のボルトがさびていましたので、自作に挑戦してみました。まずはステンレスボルトで挑戦しましたが、さすがステンレスで、硬い!(左)。削れないことは無いのですが、作業効率悪すぎるので諦めてユニクロボルトに変更しました(中上)。少しでも削りやすいようにと基部までネジ切りしてあるボルトで挑戦して、何とか削りだしました。強度などが十分かどうかは不明ですが、代用にはなりそうです。ちなみに荒削りは数分ですが、仕上げに結構時間がかかりました。

 

後期型

 後期型はラグ付きになりましたが、締結方法も変更されています(移行期には、前期型のフレーム構造に、後期型のボルト形状の混合型もあり)。インナーチューブはBB側、シートチューブ側ともにストレート管となり、バネはその間に挟み込まれています。締結ボルトの基部はBBの下面にまで達しておわん状のワッシャ(矢印)で引かれており、これがBB下部のでべその正体です。初期型のようなカシメ部が無くなって構造も簡単になり、分解しやすくなりましたが、初期型のようにチューブを抱え込むような構造になっておらず上下チューブが直接接していないので、構造力学的に問題ないのかなと思ったりします。
 後期型はシートステーでも工作を簡略化されており、この構造変化は改良と言うよりコストダウンの意味合いが強いのではないかとも思いました。

 

 ボルト上部はリングと薄いワッシャで構成され、ワッシャはリング下方に入ります(右)。フレーム中間部ではバネを挟み込むように2枚のリングがフレームとの間に配置されます(中)。フレーム下部ではU字型金具が入り、その下に12枚のワッシャ、2枚のステンレスワッシャがあり、2つのボルトで締めてあります。ダストキャップはねじ込み式ですので、最後にねじ込みます(左)。

 

 エンド巾はフロント100mmリヤ126mmで、エンドの厚みが十分あるためクイックレバーにも対応できますが、クイックにすると標準のディレーラーガードは付けられません。
 エンドはBSオリジナルのサンツアーエンドタイプです。シマノのフリーハブへの交換にも問題なく行えるはずですが、エンドの関係でシマノのインデックスが正常に働くかどうかは不明です。

 シートステイはボルト止めで、上部はシートピン、下部はM5×15mmのアーレンキーボルトで止まっています。後期ではコストダウウンのためか、シートステーチューブ末端が圧着に簡略化されています(右図)。

 エンドとシートステートの結合部は、シートステー側にネジが切ってあります。ナットは緩み止めのものですので、外す時はまずナットを取ってからアーレンキボルトを外してください。ナットを緩めずにボルトを緩めようとしても緩まないため、ネジ穴をつぶす事になります。

 この時代のフレームはほとんどが溶接でしたが、グランテックのシートステーはなぜ分割式なのかを考えてみました。グランテックの分割は中折れ式ですが、クイックレバーを上げて勘合部を緩める特殊な構造です。この動作により勘合部の長さは213mmから218mmへと5mm伸びます。これはチェーンステーに対してシートチューブが上方へ5mm伸びることとなり、シートステーの勘合部もフリーな状態では5mmのズレが発生します。

 

 輪行時はクイックシャフトが入っているため5mmもずれることは出来ません。ただし、クイックのシャフト径が5.7mm、シートステーの径が6.6mmに対してシートチューブの径は7.1mmと広くなっているためクイックを緩めれば多少のずれは可能で、実測では2mm程度ずれていました。

 残りの3mmや、私のようにクイックを緩めない場合のズレをどこで吸収されているのかと言えば、シートステーが円を描くように後方へ移動していました。ここでシートステーとチェーンステーの接合部を見てみますと、シートステー側のみネジ切りがしてあって、その外側をロックナットで締めています。この構造なら六角ボルトを強く締めすぎない限り、シートステーの可動が可能となります。

 実際見てみても、解放時に後方へ移動するのが見て判ります。私はクイックシャフトを緩めずに数百回輪行していて、未だにチェーンステーなどにひび割れなど不具合が出ていないので問題ないとは思いますが、輪行時にこの程度フレームがひずんでいたのですね。まあ鉄のクロモリだからOKなのでしょうが、カーボンやアルミならこうは行かなかったかもしれません。また、勘合部は後期になると上下の直接勘合部分が無くなるので、上部のシートチューブのみ後方へ多少移動出来るようです。後期型の変化はコストカットだけでは無かったのですね(笑)。
 フレーム的には輪行時にシートピラーとシャフトを抜くのが最善のようですが、私のようにクイック締めたままでも不具合が未だ出ていませんので、エンド部の六角ボルトの締め付けトルクに注意しながら様子を見ようと思ってます。

締結レバー

締結用レバーは塗装が悪いためか、ほとんどの物が錆びています。走行中によく見える所なので、分解してカーペイントなどで再塗装しましょう。

締結用レバーは凝った作りになっています。引上げボルトに繋がっている台座には偏芯リングが左右につけられており、これが回転することで締結・解放されます。

 

 締結用レバーにはネジが3箇所あります。ロックをする部分の貫通ボルトはアーレンキボルトM3×25mmですが、レバー自体にもねじ切りがされていますので、外す時はナットを外してからボルトを外してください。偏芯リングはM3×10mmのプラスネジで止まっていますが、M3ナイロンナットは5.5mm角と小さいですので、プライヤーなど持つときは注意しましょう。台座の固定ボルトはM4×10mmのアーレンキーネジで引上げボルトはM8×70mm(初期型)、M6×380mm(後期型)です。

 台座の固定ボルト(図左)を外す時は特に注意が必要です。M4×10mmのアーレンキーネジですが、ネジロックできつく止めてある上に、ネジの材質が柔らかいのですぐにネジ山を舐めてしまいます。舐めてしまったら鉄ノコで削って割をいれ、マイナスドライバーを使ってノミと木槌の要領で外しましょう。ちなみに、私は図右のネジにすべて交換しています。
 ネジはホームセンターで数円〜50円程度なので、レストアと同時に交換しましょう。

 初期型と後期型では引上げボルトの径が違いますので、台座も微妙に違っています。後期型のほうが径が小さいため台座の穴も小さくなっており、流用は効かないようです。ただし、本体自体は共通のようです。

 締結レバーに当たるリングは、初期と後期ではボルト径の違いにより内径が異なるだけで、ほぼ同じ物です。
 段付きリングの外径は23.0mm、段の内側は21.0mm。厚さは3.5mmで段の外側の厚みは1.7mm、内側は1.8mm、穴の内径は初期型で8.5mm、後期型で6.4mmです。

 初期型(左)に後期型リング、後期型(右)に初期型リング乗せても、問題なく納まります。
 さらに、初期型・後期型ともに、ラグに開いている穴は初期型サイズで、ラグ自体は共通のようです。

 ロック部分は左図のようになっています。ナットを外してからボルトを外すのですが、外すと同時にスプリングが前へ出てきます。組みなおす時はスプリングを図のような位置に置いて指で押し付けるか、プライヤーでスプリングを持って固定してください。それでも、なかなか通らない物です。

 初期型では引上げボルトの着脱後は緩みやすくなり、輪行を繰り返すとかなりの確立で緩んできますので、交換時以外は分解しません。錆びなどのため交換する時には、ボルトに印をつけて時々チェックと増し締めをします。それでも緩む時はネジロックを使用すれば止まりますし、メーカーもネジロック使って止めていたようです。
 後期型ではダブルナットで止めますので、緩む心配はなさそうです。

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