スリーアーム・クランク

 自転車の個性を主張させるパーツの一つにチェンリングの形があります。最近では4アームなんて物もありますが、昔はロードが5アーム、ツーリングが3アーム、個性的な人に5ピンと先輩に言われてました。ここでは販売中止になってしまった3アームと5ピンについて見てみます。

 

 左から5アーム、3アーム、5ピンで、5アームは今でもロードで使用されています。3アームはマキシィシリーズが有名で、シマノ600、サカエSuperApexなどがありました。5ピンはプロダイが有名です。

 

スリーアーム

マキシィシリーズ

 マキシィが有名ですが、その他にニューマキシィ、アイドル、マジィ(コッタード)なども出ていました。
 アウターが交換できるマキシィKが一般的ですが。その他にアームとアウターが一体になったマキシィJ、マキシィKのコッタード版のマジィ2。マジィ2のクランクのみ鉄製にしたDJ-K、DJ-Kのアーム・アウター一体型のDJ-J、DJ-Jをオール鉄製にしたDF-Jなどが乱立していました。70年台後半にスーパーマキシィが出て、その後廉価版のアイドルが出たものの、コッタードタイプは消えてゆきました。そのスーパーマキシィも80年代後半には消えてしまいました。

 

 マキシィJ(左)はアームとギヤが一体化され、インナーのみ交換可能でした。マキシィK(中)はアウターも交換可能となり、マスプロ車によく採用されてました。その後スーパーマキシィやアイドル(右)が出てきます。

 

 ギヤ歯数は32T〜56Tで、マキシィシリーズのインナー・アウターとプロダイのインナーには互換性があります。パターンはT型直線を3本配置した物が標準ですが(左)、後にルネパターンの物も出ました(中)。インナーは止める所に余裕がありますので(右)、PCD(106mm、穴芯間距離92mm)さえ合えば他社のものでも問題なく嵌りました。

 

 PCD106mmのインナーの最小は32Tで、歯にぎりぎりの位置で穴が開いています(左)。36Tはパターンを出す余裕はまだ無いのですが39Tではパターン出ていますので、38Tくらいから2パターン出ているのではないかと思います。歯数が大きくなるにつけパターンが付きますが、右の40Tのようにパターンが無いギヤもあります。

 

 パターンにはT状を組み合わせたものと、ルネパターンと呼ばれる物との2パターンありました。混在しても性能には問題ありませんが見た目が残念になりますので、今からトリプルリングを組むならば、センターリングの確保が第一でしょう(笑)。

 

 歯はオフセットしていますので、段差の少ない方を向い合わせにして取り付けます。マキシィの場合、インナーのみに穴の凹みがありますのでボルトもインナーのみに勘合部がついています。

 

シマノ600

 600シリーズが出たときにラインアップされましたが、前身はタイトリストの名前で出ていました。確認はしていませんが、PCDは600と同じ96mmだそうです。

 600のチェンリングは円弧を配した独特のパターンで、クランク-アーム一体の太い鍛造クランクは長期ツーリングでも安心感がありました。EXシリーズになって80年代後半には消えてしまったのが、残念です。

 ギヤ歯数は32T〜53Tでインナー・アウター共通です。ダブルの場合は穴の凹んでいる方(数字が書いてある方)を、外側になるように組付けます。トリプルの場合、通常ならセンターはインナーと同じ方向に付くのですが、600には42〜45Tのセンター専用歯が出ていました(右)。

 

 マキシィと違って歯は中央に付いているのですが、アウターの内側は変速に備えて削り込んであります(左・矢印)。インナーは両側に段差がありますが(下)、専用のセンターは両側とも削られていて、段差が軽減されています(中)。両側へ変速することに加えて、トリプルになるとチェンラインのズレが大きくなり、インナートップでセンターの内側が擦れるため(右)、削られているものと思います。

 

 装着は、穴に凹みがある方を外側にして取り付けます(左)。46T以上の歯は内側が削られていますが、45T以下は両側に段差があります(中)。ボルトも頭部が薄くなって埋没するようになり、見た目がスッキリしています(右)。

 

ENE CICLO

 最近、DIACOMPEの ENE CICLO ブランドから3アームのクランクが発売されたのですが、そのPCDが96mmのようで、この600 3アームとの互換があるそうです(未実証)。
 チェンリングはルネタイプで、歯数は48T,46T,38T,36T,34Tと30Tがあり、クランクピンやカートリッジBBもダブルとトリプル用が用意されています。ただ、PCD96mmで30Tは歯までぎりぎりですね。チェンラインなど、600の歯と完全互換があるかどうかは判りませんが、Netには、このクランクに600の歯を付けた写真が上がっていました。古い600の替刃もこのクランクで役に立ちそうですが、値段が多少お高いのが難点でしょう。

 この記事を読んでいただいた方からお知らせがありまして、600の3アームクランクに ENE CICLO の30T(右)をつけた所、アームのほうが1mm程度PCDが小さくて多少削って入れられたそうです。リンクの写真とは逆の組み合わせですが、ポン付けは難しそうですね。

 

サカエ Sper Apex-3TG(SAX-3TG)

 前身はCustom-3で80年頃に変わりました。クランクとアームが勘合のApexと一体のSuperApexが出ており、同じ名前で5アームも出ていました。PCDは86mmと特殊ですが、Custom-3と同じで歯に互換性があります(中)。PCDが小さいため歯は最小が28Tからあり、アウターも54Tまでとワイドにありました。形はチェンリング内部に小円を持つTAのProfessionalにそっくりで(左)、インナーが36Tの時に小円が揃ってスッキリする形になります(右)。

 

 歯はオフセットしており、取り付け方法は段差のない方を常に内側にする変わった方法です(左)。そのため、アウターとインナーは穴の凹みが逆になっており、アウターは48〜54T、センター44T〜48T、インナーは28〜48Tと、48Tでは両方の歯が出ていました(中)。ボルトは文字入り埋没で、高級感があります(右)。

 

 Super Apex-3TGの姉妹品に5アームの5TGというのがあります。この5TGもPCD86mmのため最小ギヤが28Tとなり、当時ランドナーに使用されていたマキシィ(最小32T)や高級品のマイティツアー(34T)よりも小さなギヤが使用可能でした。これに対抗するためか、スギノのプロダイはアダプタリングまで用意して最小28Tを実現しています。ただ、製品的にマイナーだったようで、3TGはBS車に採用されていて見かけたものの、5TGは現役時代は見かけませんでした。歯はアウターが48T〜54T、センター44T〜48T、インナーが28T〜48Tで、3TGと同じく47T以下のアウターが無い漢仕様でした。歯の方向も3TGと同じく、段差の無い方が常に内側です。

 

5ピン

スギノ プロダイナミック

 TAと同じ5ピンで歯の互換性があり、旧型はBBにも互換性がありました。アウターはマキシィと同じ直線タイプ(中)とルネタイプ(右)の2種類のアウターが出ていて、インナーはマキシィと共通の3ピンです。インナーも2タイプ出ていたのですがPCDは同じ106mmですので、マキシィシリーズと混在して使用することが出来ました。詳細はリンク参照

 

 歯はマキシィと同じくオフセットして付いており、片側は背面と1面になっています(左)。取り付けはマキシィと同じく、向い合わせです(中)。アウターギヤもマキシィと同じく取り付け面に段差は無くて平面です(右)。

 

プロダイ6

 後期にはTAと互換性のある6ピンインナータイプが出たため、区別してプロダイ6などと呼ばれていました。歯はアーム一体型のアウター(左)、インナーの他にセンターも出ていました。違いですが、インナーの穴にはピン埋没用の凹みが片面についていますが、センター用は両面ともスペーサーに当たるため凹みがありません(中)。ただし、スペーサーはピン頭より少し大きいので、インナーをセンター替わりに使えない事はありません(右)。付ける方向は、文字が常に外側にくるように付けます。プロダイは廉価版のPXというクランクを出していましたが、プロダイ、PX共に新旧のモデルが存在し、BBも新旧別々の物を使用します(リンク参照)

 

SUNXCD(サンエクシード)

 TA互換の台湾製5ピンクランクがSUNXCDから発売されています。BCD50mmでTAシクロツーリストと互換性があるそうですが、専用のルネパターンのチェンリングも用意されています(中)。これはプロダイのルネパターンとよく似ていますが、インナー用のPCDが違っていて最小28Tまで付きます。またPCD110mmと130mmのアダプターも発売されていて、裏面にPCD74mmの隠し穴があるため、最小24Tまで付くそうです(右)。

 

その他

勘合と一体形成

 マキシィシリーズやApexはアームとクランクは勘合(カシメ・左・中)でしたが、600(右)やSuperApexは一体形成になっていました。別に勘合でも外れたりする問題はなかったのですが、一体形成の方が高級に見えてました。

 

クランクの太さ

 マキシィKは当時のマスプロ車によく付いていましたが、600に比べてクランクが細くて頼りない感じでした。クランクの中間での太さはマキシィ12.8mm、スーパーマキシィ13.0mmに比べて600は15.9mmありました。重いと言ってしまえばそれまでですが、見た目の安心感は大きかったです。

 

フィキシングボルト(固定ボルト)

 BBの固定にはボルト形式とナット形式があります。ボルトとナットの頭は通常14mmですが、SUGINOは高級パーツとして15mmのボルトを出していました(左)。ただし、径は同じですので、ボルトと同士での交換は可能です。コッタレス抜きもボルト径に依って2種類存在しますが、クランク側のネジは共通でしたので、リムーバーはどちらでも使用できました(中)。普及品はナット形式が多かったのですが、ナットの裏面に緩み止めのセレートが付いていてクランクを削るため、高級クランクにはお勧めしません(右)。

 

取り付けピン

 取り付けピンは多種あります。径が合えば流用する事は可能なはずなのですが、各社のピンデータを測ってみました。

 

※プロダイ6トリプルは、アウター側とインナー側ではスペーサーの厚みが違います。

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