ボトムブラケット(BB)

最終更新日:2023/04/07

 大学時代はスギノ、シマノ、サカエなどの国産クランクメーカがあり、それに対応するBBも出ていて、それらは結構互換性があったと思います。クラブを卒部して数十年経った現在では、BBもシールドからオクタリンクへと移行し、四角錘のBBシャフトなんて風前の灯ですね。

 

BBシャフト(四角錘)

スギノ

プロダイ系
 プロダイ用のBBで当時のTAやストロングライトと互換性を持たせたものです。他のBBに比べて左の突き出しが少ないので、他のBBを使用すると左が極端に外へ出ていました。BB幅68mmと70mmの2種類が出ており、ダブル用はPW-68・70、トリプル用はPT-68・70とBBに記されています。テーパーはJISでもISOでもない独特のようで、後に出たJIS規格のプロダイリミティッドへは使用できないようです。詳細はこちらのリンクへ。

マイティ系
 マイティコンペやマイティツアー用のBBで、旧カンパ、サカエロイヤルなどにも合うそうです。プロダイと同じく68mm、70mmが出ていましたが、シングルは68mmのみでした。記載もプロダイと同じく、シングルMS-68、ダブルMW-68・70、トリプルMT-68・70となっています。なお、テーパーは旧カンパ系と呼ばれるものだそうで、ISOとも違ってスギノ75が後継のようです。
 

D1、D3、ChainLine(C.L.)の値を上に示します。D2は「68」シリーズが52.0mm、「70」シリーズが54.0mmです。「70」はD2が2mm増加しているものの全長は同じなので、D1、D3とも1mmずつ短くなっています。

 

マキシィ
 マキシィ、マジーなどで、よくお世話になったBBです。68mmと70mmがあり、68mmは先頭に「3」、70mmは先頭に「5」の文字が付きます。長さはシングル-S、ダブル-T、トリプル-U、ホワード-R、さらに長い「M」や左の突き出しが短い-SS.H.L.P なども存在します。Boron鋼のナット形式が一般的ですが、後年にはCr-Mo鋼のボルト形式も出ていました。

 

 Boron鋼ナットタイプのBBで、ボルトとBBが一体化しています。D3は32.0と35.0の2種類あり、マキシィは35.0の方を使用します。3Tや3Uはレストアしていてよく見かけるBBです。

 Cr-Mo鋼ボルトタイプの上級BBです。D3は32.0が主流ですが、36.0や42.0など長いものも存在します。プロダイリミティッドには120.0mmの3N-Bが付いてきました。

 BB幅が70mmの「5」シリーズで5N-B以外はすべてナットタイプです。BB幅は68mでも70mmでもチェンラインが変わらなければ長さは変わらないはずで、プロダイやマイティ系では法則どおりなのですが、マキシィ系では同じ型番でも70mmになれば長さが3.0mm長くなっています。またD2のみ3.0mm増加して55.0mmとなるも、D1・D3は同じなため実際には左右に1.5mmずつ長くなっています。

  

スーパーマキシィ

 マキシィの上位機種として出たスーパーマキシィ用のBBです。68mmと70mmがあり、Cr-Mo鋼製でボルト止めでした。刻印も「Maxy」とBB幅、そしてダブル(W)、トリプル(T)の印がある親切設計です。

サカエ

 ロイヤルは別系統ですが、SuperApexシリーズとApexシリーズはBBを共用できます。SuperApexシリーズはCr-Mo製の高級ボルト止めで、記号先頭に「D-」が付きます。Apexシリーズはナット止めの普及品で各種サイズが出ていました。BB幅はSUGINOと同じく68mmと70mmがあり、68mmのD2は52.0mmで表示に「3」が、70mmはD2:55.0mmで表示に「5」の数字が付いています。

 

ロイヤル

 フラッグシップモデルで、初期の頃から販売されており、軽量化したESLなども出ていました。テーパーはJISではなく、旧カンパや初代シュパーブなどと同じだそうです。

SuperApex
CL1:SAX-5RG CL2:SAX-5TG・3TG

 SuperApexは70年代後半に出てきたクランクで、クランクとアームが一体化形成された高級品でした。PCDは2種類あり、118mmの独自PCDを持つロード用のRGと、ストロングライト互換の86mmを持つ5TG、その3アーム版でカスタム−3の後継に当たる86mmの3TGの3機種が出ていました。その後ロイヤルの流れを汲むPCD144mmのLAが出ましたが、その頃に3ア−ムの3TGは姿を消しています。BBはボルトタイプの上級品で、先頭に「D-」のNoが付いていました。

 

Aerox・SuperCustom
Double:D-3L,D-3A,D-3P,D-5L,D-5P
Triple:D-3SS,D-3T,D-3U,D-5SP

 SuperApexの後継機としてエアロダイナミックスタイルのAeroxが出ましたが、先にエアロ化で出ていたCustomはSuperCustomと名前を変えて出ています。どちらも一体化形成で、SuperApexと同じくLA、RG、TG、3種類のPCDクランクが出ていました。BBは少し種類が増えて、チェンラインも0.5mmほど大きくなっています。

 

Apex
CL1:AX-5LA・5MA・3FA CL2:AX-5RG

 SuperApexの普及版で、クランクとアームは勘合でした。BBもそれに伴ってナットタイプの普及版になっています。PCDは144mmのLA、デュラエース互換130mmのMA、独自規格118mmのRG、BNA互換106mmで3アームのFAが出ており、チェンラインは少しずつ違っていました。

 

NewApex・Custom

 Apexの後継機種で勘合クランクですが、ご時世に添ってエアロダイナミックスタイルと言う、丸みを帯びたデザインになっています。PCDは、LA(144)、RG(118)の2種類になり、インナーリングのみ交換可能のSD(118)も出ていました。BBはナットタイプの普及版で、Apex時代より種類が増えています。また、ワンも3種類出ていて、ワンによっても0.5mm程度チェンラインが変化したりします。CustomはNewApexのさらなる普及タイプでLA・RG・SDとTGタイプでインナーのみ交換可能な5TSD(86)も出ていました。なお、Apex時代にSuperCustomの前身となる一体化形成のCustomクランク(正確にはCustom-3)がで出ていますので、Customは2グレード存在することになります。

  

タンゲ

 タンゲも昔は四角錐BBシャフトを出していましたが、対応クランクは不明です。長さは125mm以上の長めのシャフトで、詳細なデータが載っていましたので掲載しました。球当り面(F)は5R、テーパー(G)は2°で他社と共通のようですが、「F、K」はテーパー3°で長さも130mm以上と、かなり特殊なようです。

 

 BBもシールドベアリングへ移行して、四角錘最後の頃の製品です。68mm幅の3シリーズのみになっていますが、全長の短い種類が増えています。この頃のD1は32.0mmが主流でしたので、その製品群がラインアップしたのでしょう。以後、タンゲはシールドBBのみになってしまいました。

 

 ここまででお気づきのことと思いますが、スギノ、サカエ、タンゲとも似通った記号が使われています。実はJISテーパーの記号は、緩やかに規定されているようです。緩やかというのは、時々イレギュラーが出ているという意味で、各社の事情があるのでしょう。
 以下に記号と規定値を示しておきます。なお、「3」はBB幅68mmでD2は52.0mm、「5」は70mmでD2は55.0mm、「7」は73mmでD2は57.0mmになっています。


 3本共、127.5mmの「3U」です。一番上はSHIMANO製で記号は「3UBO」、Net特価¥700でした。真中はBSグランテック24・27純正品で記号は「MTBS503」と裏面に「Bo 3U」。一番下はY.M.T.(山本製作所)製で記号は「Y.M.T. 3U Boron」でオークション特価\850。3本とも同一規格品のようです。山本製作所は今でも一般車のBBやヘッドパーツを作っているようですが、SHIMANOは何時の時代の製品かは不明でした。ただ、記号が合えば代替可能と言うのは、レストアする者とって大変有り難いものです。

 

シマノ

 シマノは70年代初頭よりDuraAceのクランクを出しており、専用のシャフト(GB-100)とワンもセットで出していました。ツーリングはTourny、Titlistときて、600でダブル(GB-200)とトリプル(GB-300)の専用シャフトが出ました。これらのD2は56mmと長く、スギノやサカエの52mm標準より4mm広いのでワンも専用の物を使用します。シャフトには「Shimano600、68=W=120.4」などのマークが記載されています。

 

 70年代中期にEXシリーズが出てきますが、DuraAceは変わらないものの600はそれまでの3アームからロード寄りの5アームに変わり、D2値も52mmとなって標準に合わせてきました。600EXには通常のアーム(LD-Type)とツーリング用ショートアーム(MD-Type)のクランクがあり、シャフトも116mmと119mmで3mm違いますが共にダブル用のシャフトです。その後モデル名が変わるものの同じシャフトを使っていましたが、ツーリングを意識したDeoreブランドが立ち上がり、トリプル用に120mmを超える長いシャフトが出てきました。

 

 AXが発売された70年代最後の頃に、クランクと共にシャフトのモデル名も一新されました。新シリーズのD2は標準の52mmとなり600EXもNew600EX(FC-6207)となってトリプルが復活しています。デュラのEXやAXには107mmの短いシャフト(BB-7500)が出ましたが、並行で出ていたDuraAce(FC-7110)には初代シャフト(GB-100)がBB-7200に改名されて使用されています。この頃よりシャフトに記号が記載されて「Shimano、68=W=116、D-3L」などと記載されていて、52mmを明示する<52>のマークが在るのもあります。

 

 このままシールドBBへ移行するかに見えましたが、74デュラ用のBB-7400はD2が2mm縮小して50mmとなりました。シャフト記載は「SHIMANO DURA-ACE 68---W BB-7400」。この次のBB-7410はシールドBBとなり、オクタリンクへと進んでいきましたので、カップアンドコーンの上位機種BBは、このBB-7400が最後となります。74デュラは特殊と言いますが、規格外品が多いですね。

 

 DuraAceはシールドBBへと進んでいきましたが、Ultegra以下の下位機種にはまだ四角錘BBが設定されていました。すべて調べたわけではありませんが、D-3AやD-3NLのD2は50mmとなっており、このシリーズのD2は50mmではないかと思われます。

 

コッタードシャフト(タンゲ)

 1982年のタンゲのカタログに載っていました。コッタードクランクなんて実用車くらいしか知りませんが色々出ていたのですね。長さがインチ表示だったり、センター長が4種類あったりとカオスです。

 

TA

 旧プロダイとコンパチと言われるBBで、現在でも入手可能です。シングルの314、ダブルの344、トリプルの373,374の4種類ありますが、シャフト長から言うと、PW-68は344と373の中間、PT-68は374とほぼ同じです。D3は4種類とも29.5mmで、プロダイと同じく30mmを切る短さです。D1は33.0mm(344)、36.5mm(373)、40.0mm(374)となっており、PW-68は373に近く、PT-68は374とほぼ同じです。最近ではBBシャフトのみの販売を中止したそうで、ワンとセットでの購入だそうです。

 

Stronglight

 AXE 34はコッタードクランク用で、フレンチとイングリッシュで軸の太さが違うなんて話もあったそうです。32C〜97/TR1まではコッタレスクランクで、Type49と57クランク用です。32CはType49のみのシングル、32R・97はダブル、TR1はトリプル用だそうです。このBBのD3は30.0mmと短く、旧プロダイ互換性ありと言われた物ではないでしょうか。AXE 65は105クランクが出ている頃の物で、D3も32.25と少し長くなっていました。(D2値はすべて52mmとして計算しています)

 

シールドBB(四角錘)

シールドBBとはカートリッジタイプのBBで、軸受けがシールドベアリングなのでシールドBBと呼ばれていたようです。シールドベアリングなのでグリスアップ不要なのと、カートリッジタイプなのでロックリングによる玉押し調整などもありません。カップ&コーンタイプのBBと違う所は各グレードの中に数種類の軸長があることです。

 

TANGE

 令和に入っても四角錘のシールドBBを出しており、ハイグレードのBBシャフトが手に入らなくなった今となっては貴重な存在です。テーパーはJISで、シェル幅68mmだけでも10種ありますが、全グレード全種類揃っているわけではありません。また、最高機種のLN-9100は既に廃版となっております。
 D2を52mmとして68mmシャフトを換算したものが下の表になります。左右等長シャフトもありますが右の方が長いものもあります。BBシャフトと同じ傾向ですが、全く同じと言う訳でもなさそうです。

 

SHIMANO

90年代からシールドBBを出していますが、パーツリストや仕様書などにも左右の長さは記載されていません。ただ、シマノへメールで問い合わせて教えてもらった方がNetで公開されていましたので、その資料を換算したものを下へ載せておきます。上のTANGEと同じなので(TANGEも現行品は122.5になっている)、互換性が保たれているようです。

上記の表によりますと122.5mmのみ「D-NL」と「LL123」の2製品があります。軸長は同じですがLL123の方が右への突出しが長いそうなので、対応するチェーンホイールを使用するよう推奨されています。ただ、テーパーは同じなので違うFC使用しても嵌りますが、チェンラインが変わります。

 

JISとISOとSG75

 今でもはっきりしないJISとISOですが、SUGINOのHPにこの様な記載が載っておりました。

 これによるとSUGINO75のBBはJISでもISOでもなく、SUGINO75と言う規格で他規格とは互換性が無いとのことです。そこでNetで検索していますと複数のブログで記載がありましたので2023年時点でまとめてみました。ただ、これも確実なものではないので、話程度でお読みください。

 1)JISの規格書によると、「BBシャフト先端から1.5mm内側の長さはJIS規格で12.75mmに対して、ISO規格は12.73mm。テーパー角度はどちらも2°」だそうです。同じクランクならJISよりISOの方が深く入りますが、規格通りの違いだとすると1mm以下の違いにしかならず不具合も少なそうです。

2)勘合面は正確な規定は無く、製品によってさまざまのようです。実際、プロダイBBのPW-68では時代によって勘合面の長さが違っていました。

3)昭和の時代にISO-BBと言われていたのは、旧カンパに始まり、マイティーコンペなどの旧スギノ群とサンツアーのシュパーブなどで、NJSもこの規格です。この旧カンパ規格ともいえるものが今のSUGINO75らしく、ここで現在のISOとSUGINO75の混乱があり、上記のような掲載が出たようです。当時のサイクル雑誌などでも旧カンパBB=ISO-BBと掲載されていたのが混乱のもとのようです。

 ここからは憶測ですが、近年、旧カンパ規格(NJS-SG75)とJIS規格の2種だった四角錘BB界隈で、ISOに準拠したJISより少し細めのシールドBBをISO-BBとして発売したことが混乱のもとではないかと思っております。
 プロダイの代替BBを探している時、本家SUGINOにメールで聞くとJISのBBを勧めてくれたり、プロダイBBを推奨されていた旧PXクランクもメーカー車ではJIS-BBが付いていたりしてましたので、JISとISOでもやもやしてました。
 結局、BBは旧カンパ(NJS-SG75)規格とそれ以外の独自規格から始まり、1970年代にJIS規格を謳う太めの製品が出ただけで、最近まで本当の意味でのISO-BBは無かったのではないでしょうか。旧カンパ規格がどのようなものかは知りませんが、経験的にJIS-BBよりは確実に細いようです。

 

「BBシャフトは現物合わせ」

 さて、ここまでの話はすべて新品シャフトでの話ですが、経験者はご存知のように、BBシャフトの締め込みってどこまででも入っていくような感じがしませんか?。特に新品のシャフトを初めて締めこむ際は、かなり入っていく感じがします。そこで新品と既使用のPT-68シャフトを用意して、PXクランクに差込みましたところ、新品は4.3mmですが、既使用品では2.6mmまで入っていきました。これより、上記のチェンラインは新品を使用した時の値で、既使用品では2mm程度内寄りになりそうな事をご承知おきください。結局、新品を使用するのと既使用品を組み合わせるのではチェーンラインが同じになることは無さそうで、「BBシャフトは現物あわせ」と言われる所以ですね。サンプルの既使用シャフトは肩の部分がかなり削れています(矢印)。勘合面の傷の付き方から見ても、この部分はわざと削れているような感じさえします。

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