シマノ DDペダル

 シマノ ダイナドライブ(Dyna-Drive)ペダル。ペダル踏面をペダル軸に近づけることで踏力を効率よくクランクに伝えるとともに、足つき性も改善するように考案されたそうです。ペダル下部の接地問題でペダル自体を薄くしたことと、製品化された時期がエアロの時期と重なることでエアロペダルの様に言われていますが、基本コンセプトはエアロと関係ないそうです。

 最初の製品はDuraAceEX PD-7200としてEX末期に出ましたが、試作要素が強かったのか、直後に出たDuraAceAX PD-7300では早くも前後プレートに変更が加えられています。その後すぐに回転系を変更した二次型が出ていますが、それでも不具合が出たようで、矢継ぎ早に改良型のPD-7310が出ました。PD-7310はコーン軸径をM10からM11に上げるとともにペダル本体形状も見直して強度を上げたようですが、時すでにAXの敗色濃厚だったようで、84年には通常軸に戻ったNewDuraAce PD-7400が登場します。ただ、踏面を薄くした形状は好評だったのか、PD-7400にも受け継がれています。
 600は600AXになってから登場しましたのでPD-7300と似た部品構成ですが、回転系は別品番でした。ただ、PD-7300と同じく直ぐに二次型が出るのですが回転系はDuraAceAXと共用部品になり、その後改良されることも無く消えて行ったようです。
 80年代前半当時は、まだランドナー優勢の時代でしたのでロードはDuraAce、ツーリングは600の住み分けでしたが、よりツーリング志向のDeoreブランドが立ち上がり、そのDeoreブランドでDDペダル PD-DE10が出ています。足つきが良く、ペダリング効率が上がるためか一部で人気を博したようですが、数年で販売終了となり部品も特殊なため、程なく消えて行ったそうです。

DuraAce

 最初のDDペダルでDuraAceEXとして出ています。部品番号は461で始まる専用品で、SteelBall(000 0182)とScrew(000 1900)が共用です。StrapGuide(461 2300)が分離しているのが特徴でしょうか。

 

 DuraAceAXとして出ましたが色々問題あったようで、すぐに部品変更を受けています。回転系は461でEXの部品流用ですが、RearPlate(463 0300)、FrontPlate(463 0500)は463の左右別部品になっています。PedalBody(3-463 9001)の形状も変更されましたが、品番は[3-]の463仮番号にとどまっているようです。

 

 番数変更無しの二次型です。部品はほぼ463になりBodySideDustCap(461 1101)がOilSeal(463 1200)になっています。DustCap(463 1100)やLockBolt(463 1300)も463に変更されてWasher(461 0800)が無くなりましたが、回転部がRebuildKit(3-463 9903)としてまとめられているのは初期型からグレードUp出来ますと言うことでしょうか。Coneの絵が他より長く描かれているのが気になります。

 

 改番されてPD-7310になっています。Housing(463 0700)も463番になり回転系が一新され、PedalBody(3-463 9801)やSidePlate(463 0302)もPD-7300二次型からまた変わっています。カタログ上ではDuraAceとして紹介されていてましたので、正式にはDuraAceAXでは無いようですが詳細不明です。Cone(463 0902)がM10からM11へUpしたのは、強度問題なのでしょうね。なお、次のPD-7400からは以前と同じペダル軸径に戻りました。

 

Shimano 600

 600は600AXになって初めてDDペダルが出ました。Cone(464 0500)やHousing(464 0300)、LockBolt(464 0700)は464の専用品ですがその他は461のDuraAceEXを使用しています。また、なぜか本体番号がありませんでした。このように歌舞いた製品はDuraAceのようなTopブランドには似合うかもしれませんが、600の様な汎用グレードにも必要なのか、疑問の残るところです。まあ、流用部品多めですので、手間はさほど掛からないのでしょうが。

 

 PD-7300と同じく、二次型が出ています。回転系はPD-7300二次型と同じものがRebuildKit(3-463 9903)として使用されており、RearPlate(464 0801)も変更受けています。PedalBody(3-464 9001)は図面を見る限り初期型がPD-7200、二次型がPD-7300に似ていますので、変更受けたものと思います。

 

Deore

 DeoreブランドでもDDペダルを出していたようです。DuraAceや600とはまったく別物のようで、番号も462番なので開発はDuraAceEXの次ではないかと予想されます。すべてが新設計で、ペダル一体型の軸や25.4mmの専用スパナが必要なHousingなどユニークなペダルです。

 

 トークリップには靴の厚さに合わせて2種類のつけ方が選べます。厚い場合は(A)、薄い場合は(B)にしてください。ストラップも靴の幅に合わせて、(C)と(D)の2種類が選べます。ハウジングのスパナ径は25.4mmと特殊ですので専用ペダルスパナ(TL-PD20)を使用します。コーンのスパナ径は22mmですのでTL-PD20が使用でき、15mmのロックナットにはハブスパナを使用して玉押しの調整をします。

 

バリエーション

 短期間に変更が加えられたため、本体形状やリヤプレートなどはバリエーション豊富です。DuraAceで主なものだけ順を追ってみてみました(画像はe-bay検索)。

 

 本体は3種類あります。最初のDuraAceEX(PD-7200)はデザイン重視したような優雅な楕円形ですが、次のAX(PD-7300)では強度を重視したのか円形が小さくなります。最終のPD-7310では、強度補強の問題なのでしょうか、ペダル軸が延長されるようなデザインになって、円が2つに分割されています。

 

 RearPlateは各モデルで改変されておりますが、上記4機種以外にもあるようです。DuraAceEX(PD-7200)ではStrapGuideが分離していましたが(462 1200)、DuraAceAX(PD-7300)初期では一体型となりました(463 0300)。二次型ではPlateの括れ(赤矢印)がなくなって直線になったり、StrapGuideの爪状突起が無くなったりと、細部が変更されています(463 0301)。PD-7310では本体変更に伴って両サイドにStrapGuideが付き(463 0302)、次のPD-6207(463 0303)やNewDuraAce(PD-7400)に続いていきます。

 

 回転系は3種類あります。EXとAX初期は同じ回転系を使用しており、M10のConeにリング状のキャップが被さっています(左)。AX二次型はRebuildKitとして品番が一体となり、BodySideDustCapのOilSeal化や、水色の大型DustCapでConeを覆っています(右)。PD-7310になるとConeはM11へと太くなりましたが、水色のDustCapは同じですので、外観上はAX二次型と同じです。

ハウジング キット

 PD-7300二次型のハウジングキットです。パーツカタログには左右一組のキット(3-463 9903)として掲載されていますが、前番号の9901は右、9902は左に割り振られていました。
 また、パーツリストでは見かけなかった464系の600AX用キット(3-464 9901,9902)も載っています。さらに、2種類の長さのコーンの存在も記されているものの、どれがどれに相当するかは書かれておらず、まだまだ謎は残ります。

 二次型シャフトの組立図です。オイルシールの向きには特に注意してください。ハウジングは左右別々で、識別用ノッチがあるほうが左ハウジングです(右)。ボールは5/32"玉が18個入ります。

 

 ハウジングをペダル本体にかぶせた後に、コーンを組み込みます。ボールはハウジングと同じ5/32"玉を14個使用し、6mmの六角レンチでスムーズに回る程度まで締め込むとされていました。

New600EX PD-6207

 変速機メーカーだったシマノがペダルを初めて出したのがDureAceEXのDDペダルPD-7200ですが、同時期の600EXではペダルは出ておらず、83年に出たマイナーチェンジのNew600EXで初めて出ました。次の600AXはDDペダルですが、PD-6207は通常軸のエアロタイプペダルで、後に出るNewDuraAcePD-7400のプロトタイプのような製品でした。品番系列では「460」が当てられており、461と463のDuraAceEX・AX、462のDeore、464の600AXから推測すると、開発のトップだったように思われます。ほとんどのパーツは 460の専用品ですが、リヤプレートだけがなぜか 463のDuraAce番号で、なおかつPD-7310の後番に当たる463 0303(R) 463 0403(L)になっています。上記にあるようにリヤプレートは製品開発に苦労があったようで、83年登場時から改良型が付けられていたのかもしれません。

 

 PD-6207の売りのひとつは、シャフト端を斜めにして従来の29.5°のロードクリアランスを1.5°深くして31°にしている事です。これに気を良くしたのか、次のPD-7400ではシャフトの外端を埋め込んでしまって34°のロードクリアランスを実現しています。

 

 PD-6207の翌年に600AX(PD-6300)の発売となるのですが、AXは短命に終わって7400/6400の時代が到来します。ただし、600ULTEGRA(PD-6400)の登場はNewDuraAce(PD-7400)に比べて遅かったためか、PD-6300が消えた後もPD-6207はしばらく販売されており、PD-6400販売後もカタログにしばらく残っております。その頃のパーツリストが上記で、リフレクターの追加やスクリューの変更、トークリップのDuraAceとの共用化など細かな変更を受けています。

 

 リヤプレートのパーツ品番は変更ないのですが、リストでは外側のストラップガイドが側方から下方に変更されています(赤矢印)。私が所有しているPD-6207も右ペダルは下方ガイド(上)なのですが、左ペダルは側方ガイド(下)で左右で違います。Netで見てみると左右とも側方、下方のプレートが存在しており、移行時に混ざったのか、私のはあいのこ(笑)のようです。なぜ同一品番で形状の違うプレートが存在するのかは不明ですが、エアロ負債でシマノが傾きかけていた混乱期の事ですので、細かいことは有耶無耶になっていたのかもしれません。

 

ペダルスパナ

 DDペダルは形状が特殊なので、ペダルスパナも専用のものが用意されてました(DuraAceAX,EX,600AX用ペダルスパナ TL-PD10(4-460 0901) 30mm厚)。ただ、次のPD-7400のように特殊な形ではなく8角形のスパナですので、薄めの汎用スパナでも径が合えば代用できそうです。純正品はとっくの昔に廃番ですが、需要が未だにあり、作りやすい形状なのかコピー品(右)が¥2,000前後でオークション販売されているのを見かけます。

 

 PD-DE10専用のペダルスパナです。と言っても、普通の2面スパナで、幅が25.4mmと特殊なサイズだけです。当然とっくの昔に廃番なのですが、25mmの平スパナを買って0.4mmほど平ヤスリで削ればできそうな代物です。対側の22mmスパナはコーンの締め付けに使用します。

ペダル・クランクアダプター

 DDペダルの軸は通常の BC9/16"x20tpiよりかなり大きいのですが、DDクランクに通常のペダルが取り付けられるように、アダプターが出ていました(左)。これを使用するとDDクランクで一般のペダルが使用できるのですが、純正以外の互換品も何種類か出ていたようです。

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