フロントディレーラー

FDの一世を風靡したサンツアー 初代サイクロン

 フロントディレーラー(FD)はプレートが左右に動いてフロントの変速を行う物ですが、70年代後半より基本構造は変化していません。ただし、時代によって多少の違いがありますので、そこらへんを見てみたいと思います。

 

取り付けバンド径

 取付けはダウンチューブにバンドに止めるのが一般的で、昔のクロモリなど鉄フレームは28.6mm径で統一されてました。最近ではカーボンや楕円フレームの出現で31.6mmや34.9mmが主流になって、28.6mmはアダプター対応となっている様です。最新のFDを旧車につける場合はアダプター対応かどうかをご確認ください。

チェンリング数など

 昔のインナープレートは平板でしたので問題なかったのですが、最近では変速にあわせてプレートに段差を付けたためダブル用とトリプル用で違う製品となっています。また、シマノではSTIとフラットバーに付くラピッドファイヤーでは引き代の違いからか互換性が全く無いそうです。性能が良くなった代わりに汎用性がなくなったと言う事ですね。

MTBタイプは上記以外に固定方法が違っていたり、ワイヤーの上引きや下引きがあったり、果ては「チェーンステーアングル」の違いがあったりしますが、詳しくはメーカーなどのHPを御覧下さい。旧車に使うFDのスペックは、バンド径28.6mmの下引きで統一されていて互換性は高いです。

 

取付けバンド

 ダウンチューブにはバンドで固定しますが、バンドは両ボルト、片ボルト、エンドレスクランプ式などがありました。小物をチューブに直付けする方法もありましたが汎用性に乏しくて流行らなかったものの、最近ではカーボンや楕円のフレームが出てきたためバンド式から直付けへと移っているようです。

アウター受けとケーブルガイド

 初期の頃はバンド式のアウター受でしたが(左)、直付けが流行りだしてからはマスプロ車でもアウター受けの直付け溶接されていました(中左)。ただし、マスプロ車でも80年以降はアウターの要らないローノーマルへと移行したためアウター受けではなくてケーブルガイドに変わってきます(中右)。ケーブルガイドもバンド式と直付け両方ありますが、近年ではBB下にネジ止めするケーブルガイドが主流のようです(右)。

 

取付け方法

 最初に横から見てアウタープレートとアウターチェンリングの隙間が1〜3mmになるように設定します。ただ、1mmってほとんど接触するような感じですし古いチェンリングは誤差もありますので通常は3〜5mmという所でしょうか。次に上から見てアウタープレートとアウターチェンリングを平行、または少しだけ外向きにつけます。外向きに付けすぎるとクランクに当たりますので実際はほぼ平行と言う所でしょう。

 

シフト幅調整

シフト幅の調整は上部のボルトで行います。上から見て内側にあるのがIN(Low)側、外側にあるのがOUT(Hi)側です(左)。
 IN側はボルトを締める(時計方向へ回す)と(赤矢印)、ロッドが押し下げられ内側の限界が外側へ移動します。反対に緩める(反時計方向へ回す)と(青矢印)、ロッドが上へ上がるようになり内側限界が内側へ移動します。
 OUT側は反対で、ボルトを締めると限界は内側へ(赤矢印)、緩めると外側へ移動します(青矢印)。
 ダブルギヤの場合、上記のようなローノーマルならワイヤーを一杯に引いてOUTへ、緩めてINへ変速しますが、一杯に引いたときの外側の位置を右ボルトで、一杯に緩めた時の内側の位置を左ボルトで決定しています。どちらも少なすぎると変速しませんし、多すぎるとチェーンが外れてしまいます。ちょうど良い位置を探りながら調節してください。

 

 上記はローノーマルでしたが、トップノーマルでも同じ方式です(左)。サンツアーARXのようにアーム上に固定ボルトがあるものもありますが、理屈は同じで上方のボルトでINを、下方のボルトでOUTの位置を規定しています。

 

 ここまでお読みいただくとお気づきとは思いますが、プレートの動きには限界があります(左)。IN側はインナーとチェーンステーとの隙間の関係で限界を超えることは無いと思いますが(中)、OUT側はトリプル化などで長いBBシャフトに交換してチェーンラインを外側に移動しすぎると、変速に不具合が出てきます。旧車のチェーンラインは、2段で43.5mm、3段で45.0mm程度ですが、古いFDでも50mm近くまでは行けると聞いたことがあります(不正確)。ただ、最近のMTBでのチェーンラインは50mmですので、最近の方が可動範囲は大きくなっているようです。チェーンラインの詳細はこちらへ。

 

トップノーマルとローノーマル

 力の掛かっていない自然な位置(ノーマル)がロー(内側ギヤ・インナー)にあるのがローノーマル、トップ(外側ギヤ・アウター)にあるのがトップノーマルです。トップノーマルは引けばローに変速し、ローノーマルは引けばトップへ変速します。どちらでも良さそうですが、引く時は人の力で強制的に引きますのでクイックに変速しますが、戻る時はスプリングの力のみで変速しますので、引く時より緩やかに変速します。

 

 ローノーマルはワイヤー(青線)が下方に引かれると、アームを介してプレートが外に押し出され、アウターへ強制変速します。逆にワイヤーが緩むとバネの力で緩やかにインナーへ落ちていきます。この方式の場合、アウターはケーブルガイドの役目しかしませんので、アウターはあっても無くても良いようです。

 

 トップノーマルはワイヤー(青線)上端が固定されているため、引かれると下方のワイヤー受けがアウターごと上方へ引き上げられます。このアウター受けの力がアームを介してプレートを内側へ寄せてインナーへ強制変速します。逆にワイヤーが緩むとバネの力でプレートが外側へ移動してアウターへ変速します。この方式はアウターでアームを押しますのでアウターが必需品です。

 

 どちらの変速を重視するかで選べればよいのですが、実際にはトップノーマルの製品は早い段階で消えてしまい、今ではほとんどがローノーマルです。トップノーマルの利点として、ローが必要になる坂の手前でクイックに変速できる、通常走行時(フロントアウター、リヤトップ)時のWレバーの位置がダウンチューブと平行になって美しい(笑)などが言われますが(左)、ローからトップに戻るのがバネだけの力に頼るため歯数の差が大きくなると変速にもたつくようになります。昔のFDプレートは、段差がついている最近のFD(中)と違ってまっ平でしたので、変速時にもたついていたように思います。逆にローノーマルの場合、上がり難いトップへの変速を強制で行えるので確実に変速でき、ローへの変速はバネに頼るものの、落ちていくようになるのでトップノーマルのリターンほどもたつかないように思いました。また、トップノーマルはその構造上アウターを必要としますが、BB近くのアウターは水がたまって錆びやすく、メインテナンスが面倒なのも廃れる一因になったと思います(右)。

 

トップノーマルディレーラー

 トップノーマルの代表格と言えばこのサンツアー3兄弟でしょう。左より廉価版のSpirt、プレートに穴をあけたCompeV、プレートが軽合製になったSLです。SpirtとCompeVは当時のメーカー車によく採用されていましたが、プレートまで軽合製になったSL(右)はさすがに意欲的過ぎたようで、プレートの破損を何回か聞いたことがあります。

 

ローノーマルディレーラー

 70年代後半に入ってローノーマルのサイクロンデュラエースが出てきました。サイクロンはローノーマルながらアウター受けが付いていましたのと、チェンジの切れ味の良さに惚れて以後はずっとサイクロン使用しています。初代はアウター受けのあるタイプと無しのタイプが売られていましたが、80年代以降はアウター無しの製品に切り替わっていきました。ただ、外国製品は最初からローノーマルが主流でした。

 

2ウエイワイヤーシステム

 サンツアーはローノーマルになって以降のARXや後期のサイクロン、初期シュパーブなどにネジ込み式アウターストッパーが付いていました(2ウエイワイヤーシステム)。サイクロン7000になっても受け用の爪がついていますがSLの頃になるとさすがになくなっています。

 

サイクロンワイドアダプター

 FDの設置はアウターの歯から1〜3mm離して設置するのが標準です。そのためインナーをあまり小さくするとFDの下面にチェーンが当たってしまいます。これを回避するにはFDの下方を伸ばせばよいのですが、あまり延ばすとチェーンステーに当たったり、剛性が低下してよじれたりします。昔のFDのキャパシティ(アウターとインナーの歯数差)は14T程度のものが多かったのですが、サイクロンはワイドアダプターを付けて18Tを22Tまで広げていました。

 

 私も付けていたのですが、フロントが49-45-32で17Tとぎりぎり必要なく(左)、インナー時にアダプターの先が泥除けと干渉起こして泥除けをへこませる羽目になったりしたので(中)、数年で外してしまいました。このアダプターはオプション品かと思ってましたら、カタログには「サイクロンワイド(ツーリング用)」ModleNo.3705なんてのが製品として載っていました(右)。サイクロンの詳細はこちらへ。

 

エンドレスクランプ

 サンツアー・サイクロンのWシフターにも似たような構造のエンドレスバンドがありますが、これはその後に出たFD用のバンドです。ヒンジ止めよりも軽量ですっきりしていますが、装着に多少手間がかかりました。シフターのようにズレが問題になるかと思いましたが、力のかかる方向がバンドと垂直なためか、不具合を聞いた覚えはありません。80年代前半に登場したようですが、メリットが余り無かったのか、流行ってはなかったようです。

 

 装着方法ですが、芯軸に「+」ネジが切ってありますので、まずは外します。締結部を解放しダウンチューブに通します。再び締結した後に芯軸をしっかりと取付ければ出来上がり。あとは芯軸をFDのネジ部に通して締付て固定します。シマノにも似たようなバンド締めがありましたが、こちらはフーデッドレバーのようにU字型バンドで止める形式だったようです。

 

 シュパーブやサイクロンに採用されていましたが、ヒンジ止めも同時に出ていてクランプバンドのみの製品は無かったようです。基部は同じ物ですので、クランプも共通のものが使われています。

 

 数年前にオークションで仕入れたシュパーブプロですが、クランプ部が無かったせいか入札が不調で、天下のシュパーブプロが\710で買えました(左)。しかし、クランプが無いのでタンスの肥やしになっていたのですが、先日「サンツアークランプ」なる物が出品されていたので使えるのではないかと思って落札しました(中左)。クランプの方は人気が有ったようで、落札価格は\1,050と本体より高かったです(笑)。ただし、時代が少し違うのか特徴的なボルト(中右)ではなくて、ただの六角ボルトが付いていたため、これだけでは使えません。ネジはM6×0.75で、ホームセンターなどには見かけない物です。通販購入しか無いかなと思っていたところ、使用済みネジ袋の中にちょうどよいものが見つかりました(右)。

 

 YAMAHAの単車 XT-250の吸排気バルブを押すスクリュアジャスタボルトがちょうどM6×0.75でピッタリ合うのです(中左)。アジャスタボルトは数万キロで交換ですので、交換後のボルトが残っていました(中右)。長さをカットして、回り止めとして薄めのネジを入れれば問題なく付きました(右)。

 

フロントディレーラキャパシティ

 最近ではトリプルギヤが人気のせいなのか、FD板の曲げ具合のせいなのか、最大キャパシティと最小キャパシティがあるようですが、昭和の時代は今の最大キャパシティに相当するフロントディレーラキャパシティが各FDに設定されていました。フロントチェンリングの最大歯数から最小歯数を引いた数が、使用FDのキャパシティより小さくなるようにします。キャパシティはディレーラ板の長さで決定されますので、長いほどキャパシティが大きくなり、小さなインナーが使用できるようになります。キャパシティを越えて使用するとインナー時にFDの下面にチェーンが接触する事になりますが、実際は2〜4歯ほど余裕を持たせているそうです。写真は49T-32T(CT:17)にサンツアーサイクロン(CT:18T)を使用した例で、まだ15mm程度余裕がありそうです。

 

 FDキャパシティは最大歯数から最小歯数を引いた数より大きければよいのですが、キャパシティ18Tと言っても、48T-30Tと54T-36Tでは直径の問題から距離が違うのでは無いかと思っていました。ところが、調べてみましたら1mm程度の違いしかなくて、チェンリングは歯数と直径がよく比例していました(左図)。
 これなら、どの組み合わせでもギヤの距離差は同じになりますね。下表は手持ちのチェンリングの直径をを実測したものです。

90年までのFDのキャパシティ(CT)を載せておきます
パーツカタログの掲載値をそのまま載せています。

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