ダイナミック・プロフェッショナルシリーズ

 古くはコッタードクランクの時代からあるスギノの5ピンクランクで、フランスのTAやストロングライトとの互換がありました。80年代に入り廉価版のPXが出ましたが、プロダイの方は姿を消します。90年代に入って新設計の新NewPXと限定版のプロダイリミティッドが出ますが、市場からはすぐに消えてしまいました。

 

クランク

ダイナミック・プロフェッショナル

 通称プロダイ。1970年代から販売されていたクランクで、TAやストロングライトと互換性があるので有名でした。BBシャフトはJISとISOの中間との説あり、ダブルにはPW-68、トリプルにはPT-68の専用シャフトが用意されています。当時、TAのクランクは剛性が低くてしなると言った噂があり、クランクとBBをプロダイにして、歯のみTAというのがクラブで流行ってました。

 

SUGINO PX

 俗に言う旧PXで、90年代まで販売されていました。プロダイの廉価版として発売されていたようで形状も良く似ており、TAとコンパチな部分も同じでした。BBシャフトもプロダイBB(PW-PT系)を使用と聞いていたのですがテーパーはマキシーテーパーらしく、カタログ上ではトリプルにマキシィの3U-B(3U)が指定されていたり、FUJIオリンピックランドナーに付いていたトリプル用BBシャフトはマキシィ3Rとの話もあります。スギノにメールで聞きましたところ、チェンラインは45mmでダブルなら3N-Bを使用するようにと言われました。長い販売年月と相まって色々な情報が目に付きます

SUGINO NewPX

 設計が新しくなったPXで、90年代後半に出ていたようです。この頃の流行なのか、ロープロファイル化されており、横から見ればPXとの違いが良くわかります。また「PX」の文字が大きい、クランクの肩の削れが小さいなどの違いがありますがPXとの比較でしかないので、取り付けボルトの5ピンの頭が6角ボルトかどうかで区別するのが的確だそうです(右矢印)。BBシャフトは、ダブルなら3H-Bと言う短いシャフトを使用するように言われました。販売時期が短かったのか、Netで見かけるのはほとんどPXで、NewPXの話題はあまり見かけませんね。

 

プロダイリミティッド

 プロダイの復刻版として発売されたようですが、この頃になるとプロダイが正式名称になっています。設計はNewPXと同じロープロファイルクランクで、仕上げと刻印(中)がNewPXと違う程度です。クランクとセットでついてきたのは3N-BのクロモリBBシャフトで、流れから推察するとトリプル用シャフトなのでしょう。限定生産だったのか、復刻版だったためか、程なく市場から見なくなってしまいました。

 

プロダイの代用シャフト

 最近「プロダイのクランクを持っているが、どのBBシャフトを付けたらよいのか」と言う質問が来ました(さすがに、逆はないようです(笑)。そこで、プロダイ用ダブルのPW-68とプロダイリミティッドに付いてきた3N-Bについて上の図の長さを測定した物が下の表です。A1〜C1は右クランク(チェンリング側)、A2〜C2は左クランク側の値です。DR,DLはフレームセンターから軸端までの距離を示します。

 

 長さを見てみますとAとBの値はほぼ同じで、これはテーパー角が同じ(2°)を示しています。3N-BはJISシャフトなので、PW-68はそれより細いと思っていたのですがA値は同じで、素人の測定誤差を鑑みても大きな違いはなさそうです。斜面の長さCは、右では同じ16.2mmですが、左は3N-Bで1.4mm長くなっています。また、センターから軸端までの長さは、右(DR)はほぼ同じですが、左(DL)は3.5mm長くなっており、これが総軸長の長さの差に相当しています。と言う事で、2本比較したのが下の写真です。

 

 右側はほぼ揃いますが、左側が3N-Bで長くなっています。また勘合部斜面も3N-Bで長くなっています。右図はクランクの外側から見たものですが、新旧共に4.3mmの部分までシャフトが入っていました。これよりシャフトの勘合面に対しては2本に大差ないものと思われますのでPW-68の代用として3N-Bは使えそうです。
 ただ3N-Bシャフトも既に販売はしていないので、PW,PT(プロダイ用)、3S、3U、3R、D-3P(スギノ)、D-3NL、UN-71(シマノ)で調べてみました。

 

各シャフトにおけるD1、D3

 D3値は左の突き出し量ですが、PW,PTともに29mmを切っており、ぶっちぎりの短さです。これに対応できる代替シャフトはありませんので、左はあきらめます。

 

ダブルシャフト

 D1値を比較すると、シマノシールドBB・UN-71が同じで、3N-B、D-3NL、D-3Pが0.5mm差です。マキシィ系ではシングルの3Sでも37.5mmと長すぎますが、左右逆にすると35.0mmで0.5mm短めになります。

 

 シマノシールドBBは左右の突き出しが同じなので、近いのはUN-71(123.0mm)の35.5mmでしょうか。ただし、左右対称なので左が思いっきり外へ出ますね。

 D-3PをPW-68と比べてみると、左の突き出しは32.0mmなので3N-Bと同程度の延長で済んでいます。右は35.0mmでPW-68よりも0.5mmだけ短くなっていました。

トリプルシャフト

 マキシィ3U-B(3U)はPXのトリプルシャフトに指定されていたもので、D1値は40.5mmと同じです。ただし左は32.0(35.0)mmと、外へ出てしまいますね。シールドBBの場合、左右対称を考慮して計算すると軸長は133.0mmとなり、こんな長いBBシャフトではあったとしても左が凄まじく外へ出そうです。

 FUJIオリンピックランドナーのPXトリプルクランクに付いていたと言われているマキシィ3Rです。長さ129.0mm、D1が42.0mm、D3が35.0mmと共にPT-68より長くなっています。なぜPXにこのシャフトが入っていたのかは不明ですが、市販車ではトータルで設計できますので、この組み合わせで良かったのでしょう。チェンラインを多少外へ出したい時には、有用かもしれません。

 プロダイはTAコンパチだそうですので、TAのBBシャフトと比べてみました。シングルの314、ダブルの344、トリプルの373,374の4種類ですが、シャフト長から言うと、PW-68は344と373の中間、PT-68は374とほぼ同じです。D3は4種類とも29.5mmでプロダイと同じく30mmを切る短さです。D1は33.0(344)、36.5(373)、40.0(374)となっており、PW-68は373に近く、PT-68は374とほぼ同じです。TAのBBシャフトはプロダイシャフトの代わりになりますが、BBシャフトだけの販売を近年中止したそうで、単体では手に入り難いそうです。

 結局、代替BBシャフトはダブルなら3N-B、またはシールドBBのUN-71。トリプルなら3U-B(3U)と言うところでしょうか。ただし、3N-B,UN-71とも現行製品ではなく、3Uはまだ流通しているものの、ナット締めなのがポイント減です。なお、これらは机上の計算で、実際に自転車に付けて試したわけでは無い事をご承知置きください。なお、他社製品を含めた検討は、こちらへどうぞ。

 

PXとNewPX

 NewPXはロープロファイル化されていますが、チェンリング勘合面からクランク遠端の外側までは新旧ほぼ同じなので、チェンラインを合わせれば右クランクのQファクターは同じとなります。ただ、シャフトとの勘合部(矢印)はかなり内側に来ていますので、シャフト長も短いものになりそうです。

 PXとNewPXにJISシャフトである3N-Bを入れた所、両者とも勘合面の遠端から4.2mm程度のところまで入りました。シャフトの入り具合は同じようですのでPXもマキシィテーパーのようです。ただ、勘合面はPXが15.8mmに対してNewPXは18.7mmあり、勘合面の短いシャフトでは近端がつっかえるかもしれません。

 

 以上よりシャフト先端から、チェンリング勘合面までを算出しますと、PXでは16.3mmで、NewPXでは10.1mmになります。よって、同じチェンラインを得ようとするとNewPXはPXより右突き出しが6.2mm短いシャフトを選べば良いこととなります。

 

 Netや問い合わせメールの情報を総合すると、PXのダブルは3N-B、トリプルは3U-B(3U)、FUJIランドナーは3R、NewPXのダブルは3H-B、トリプルは3N-Bとなりそうです。上記に数値をまとめてみました。

 

 スギノは昔からチェンリングの間隔に差が付いており、インナーにマキシィを流用するプロダイでは左のような間隔でした。その後、TAに似せたプロダイ6が出ましたが、間隔は右のようになっています。チェーンラインを歯と歯の中間線とすると新旧でラインが変わってきます。赤い線でクランクと接しますので、上記の計測値から算出したチェーンラインはプロダイがC.L1、プロダイ6がC.L2になります。トリプルに3U-Bが指定されていたのはプロダイ6なのでチェーンラインは44.8mmになり、他の値も大体45mm前後ですが、PXの3RとNewPXの3N-Bがほぼ同じになっています。フレームによっては3U-Bではなくて3Rでも良いのでしょうね。

 

 さて、ここまで使用したシャフトはすべて新品でした。ただ、経験者はご存知のように、BBシャフトの締め込みってどこまででも入っていくような感じがしませんか?。特に新品のシャフトを初めて締めこむ際は、かなり入っていく感じがします。そこで新品と既使用のPT-68シャフトを用意して、PXクランクに差込みましたところ、新品は4.3mmですが、既使用品では2.6mmまで入っていきました。これより、上記の比較はあくまでも新品に対して嵌め込んだだけの値で、締め込むと2mm程度内寄りになる事はご承知おきください。結局、新品を使用するのと既使用品を組み合わせるのではチェーンラインが同じになることは無さそうで、「BBシャフトは現品あわせ」と言われる所以ですね。サンプルの既使用シャフトは肩の部分がかなり削れています(矢印)。勘合面の傷の付き方から見ても、この部分はわざと削れているような感じさえします。

 

チェンリング

 5ピンチェンリングは新旧共に同じで、TAの歯も使用できます。アウターの3箇所にインナー用PCD106mmの穴があり、マキシィ系のインナーと共用になっていました(中)。ルネタイプのアウターも追加されましたが、穴の位置は同じです(右)。歯数はインナーが32T〜50T、アウターが48T〜52T(後に54T)ですが、アタッチメント取付けで28Tのインナーも用意されていました。

 

 歯はマキシィと同じくオフセットしており、段差の無い方を向かい合わせにして取り付けます(左)。インナーは外側にピンのくぼみが付けてありますが(中)、アウターギヤは両面とも取り付け面に段差は無いので方向に注意が必要です(右)。

 

 インナーはPCD106mmの3ピンで、マキシィシリーズのインナーとアウターに互換性があります。最小は32Tで、歯数が大きくなるにつけT型直線を3本つなげた形になりますが(右)、円形のルネタイプも出ていました(左中)。ただ、右中の40Tのようにパターンが無いギヤもあります。36Tはパターンを出す余裕はまだ無いので(左)、38Tくらいから2パターン出ているのではないかと思います。

 

プロダイ6

 後期にはTAと互換性のある6ピンインナータイプが出たため、区別してプロダイ6などと呼ばれていました。歯はアーム一体型のアウター(左)、インナーの他にセンターも出ていました。インナーとセンターの違いは、インナーの穴にピン埋没用の凹みが片面についていますが、センター用は両面ともスペーサーに当たるため凹みがありません(中)。ただし、スペーサーはピン頭より少し大きいので、インナーをセンター替わりに使えない事はありません(右)。PCDは80mmとなり、最小26Tまでとなっていました。

 

 付ける方向は、文字が常に外側にくるように付けます(左)。クランクとアウターは5ピンで取り付くため、トリプルの場合は、アウターとセンター、センターとインナーの2箇所にスペーサーが入ります(中)。ただし、このスペーサーは同じではなく、アウター側で3.4mm、インナー側で4.2mmとインナー側が厚くなっています(右)。インナーTopの時、センターギヤに擦らないようにとの配慮と思いますが、10速用チェーンなんかで踏み込んだら挟まっちゃいそうですね。

 

アダプター

プロダイアダプター

 プロダイのインナーはPCD106mmでしたので、マキシィシリーズと共通で便利なものの、最小が32Tまででした。さらに小さなギヤをと、アダプターを作成して28Tが付くようにしたもの。この場合、アウターとセンターがマキシィ用PCD106mmになり、インナーは別ピンで付いています。5ピンとあわせると11個のピンがあり、多少ごてごてしていますね。

マイティアダプター

 プロダイのクランクにマイティリングをつけるためのアダプター。PCD151mmだそうですが、後に144mmもあったそうです。トモダカタログ'76に載っていましたので、その頃の製品でしょう。

SUNXCD(サンエクシード)

 TA互換の台湾製5ピンクランクがSUNXCDから発売されています。TAシクロツーリストと互換性があるそうですが、公称BCDは50mmですのでどうなのでしょうか(TAのBCDは50.4mmとの話もあり、入るかどうかは未実証)。プロダイのルネパターンとよく似ている専用のチェンリングも用意されていますが、インナー用のPCDが違っていて最小28Tまで付きます。またPCD110mmと130mmのアダプターも発売されていて、裏面にPCD74mmの隠し穴があるため、最小24Tまで付くそうです(右)。PXやプロダイクランクも入るはずなので、小さいインナーほしい場合は、上記アダプターよりすっきりしそうです。

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