球(ボール)

最近では回転部にシールドベアリングの使用が多くなっているようですが、昔は球を球押しで押している方式でしたので定期的にグリスアップや交換が必要でした。

 

 回転部分は、ボスフリー(1/8)、ヘッドパーツ・ペダル(5/32)、前ハブ(3/16)、後ハブ・ボトムブラケット(1/4)の6箇所ですが、グリスアップの必要性から言うと、まずは前後ハブ。ついでボトムブラケット(BB)とヘッドパーツその後にペダル。ボスフリーはよほどのことが無い限り開けないほうが無難です。

 

 サイズは国産の場合、一般的には4種類でインチ表示です。分母を32にすると分子は4/5/6/8になり、ほぼ1/32区切りですね。最近ではクリート化して回転部が小型化したためか、ペダルに3/32の小さな球が使用されています。材質は鉄ですが、最近ではステンレス、そしてセラミックなんてものまで手にはいるようです。等級(真球度)という物もあり、高い物(真の球形に近いもの)からG3、G5、G20と続いていきます。

 

 どのグレードを使用するかですが、一説ではデュラエースのステンレス球でもG100以下の精度だそうですので、精度は気にしなくても良さそうです。材質はステンレス、セラミックになるほど硬度が増して磨耗し難くなり耐久性と回転精度が上がるそうですが、お値段も一気に上がっていきます。鋼球なら20個\100の3/16球が、ステンレスなら6倍の\600程度。セラミック(G3)に至っては1個\200以上で40倍の違いがあります。1秒を争う競技の世界には高精度が必要かもしれませんが、旧車をレストアしている私などには鋼球で十分ですね。まあ、お金に余裕のある方はステンレスでも良いでしょうが、セラミック使用は後述しますようにお勧めしません。

 

 回転部分は球と球押し、ワンのある本体部の3つから成ります。回転部分ですので部品に磨耗や傷が出てくるため交換が必要になりますが、一番交換しやすいのが球で、次に球押し、ワンのある本体部が傷ついた場合は交換というより総替えですね。これより交換を考慮すると、剛性が一番強いのが本体のワン、次いで球押しで、球が一番弱いのが理想的です。実際、ハブやBBを整備していますと、虫食いが起こっているのは球と球押しが圧倒的に多く、ワン本体に傷が入っているのは滅多に見ませんでした。また、球はすぐに手に入りますが、流用の効きにくい球押しが虫食いになっていると補修不可能になる場合があります。
 最近のパーツは精度や硬度も上がっているのでしょうが、昭和のパーツはそれほどの硬度はないと思われますので、高硬度のセラミックボールなどを使用すると球よりも球押しやワンが先に傷つきそうです。また球押しやワンの精度も今ほど高くないので、そこに高精度の球を入れても効果は無いでしょうね。最新のデュラエースでもステンレス球ですので、実用上では鋼球で十分だと思ってます。

 

 グリスも色々ありますが、耐水性、耐久性を重視するほど高粘度になり回転抵抗は増すようです。自転車用としても色々出ているようですが、私は粘度と値段が手ごろなデュラグリス(左)を使用しています。デュラグリスは粘度が強くて抵抗が大きくなり、パワーロスが発生すると言って嫌う人もいるようですがレースをしているわけでもなく、昼食の味噌煮込みうどんを1分早く食べ終えれば取り戻せるようなロスなら気にならないですね。以前はカンパグリス(中)を使っていましたが、いつのまにか店頭から見かけなくなってしまいました。色が独特で多少甘い香りがするので気に入っていたのですが残念です。右のチューブに入ったグリスはホームセンターで売っていた機械用グリスです。粘度が低いので回転などには良かったのですが、耐水性は全然ダメでした。

 

バラ球とリテーナー

 1970年頃より、球を枠でまとめたリテーナーが出てきました。ヘッドやBBに使用されていますが、球のサイズや置き場所は同じなのでリテーナーを同サイズのバラ球に置き換えても問題ありません。ただし、使用する球数が多くなるのと整備がめんどくさくなります。置き換えの数は1球程度の隙間を空けるのが適正数だそうです(右)。

 

リテーナーの向き

 ヘッドパーツには上下2箇所にベアリングが入っており、最近では16玉のリテーナー形式になっています。リテーナーには向きがあり、エッジの出ている方に内ワンが、出ていない方に外ワンが来るようにします。逆でも一応入りますが、エッジが外ワンに当たるためベアリングが当たらず、外ワンに傷が入って壊れます。

 

 ヘッドパーツの場合、リテーナーの向きはロードタイプとマイクロアジャストタイプで異なります。下ワンはともに内ワンが下方ですのでエッジの出ているほうが下方になります。上ワンはロードタイプでは同じく下向きですが、マイクロアジャストタイプでは逆の上向きになります。これはフロントフォークを抜いた時、リテーナーが車体本体に残るようになっているため、外ワンがともに車体側になってリテーナーの向きが背中合わせの逆向きになります。詳細はリンク先参照

 

シールドベアリング

 最近ではハブやBBにシールドベアリングを使用しているようですが、シールドベアリングはメインテナンスフリーなので分解できません。不具合が出たときにはベアリングの打ち替えか、本体ごとの交換ですね。

 

球焼け

 新品の鋼球は銀色をしていますが、整備していると時々、黄金〜茶色のボールが出てくることがあります。これは球焼けで、グリス切れによる摩擦熱で表面が焼けているそうです(詳細は不明)。金色は熱焼けで、茶色はサビ焼けなんていわれますが、どちらも見かけたら速攻で交換しましょう。左写真では違いがわかりにくいですが、実際に新品と比べると一目で違いがわかります。ちなみに良く見かけるのがリヤハブのフリー側で、手が届き難いからでしょうね。

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