カンチブレーキ

 ホッチキスのようなVブレーキ全盛の今となっては、カンチブレーキなど死語に近そうですが、私が自転車に乗り始めた頃は普及車にはサイドプルで、カンチブレーキは高級スポーツ車にしか付いていませんでした。

 70年代のカンチといえばダイアコンペDC960がほとんどでしたが、マファッククリテリウム、シマノのカンチなどもあったようです。この流れは80年代に入ってもほとんど変わりませんでしたが、90年が近くなってMTBが流行りだしてから種類が増え始め、Vブレーキ出現まで結構な種類が出ました。

ダイアコンペ

ダイアコンペ DC960

 完成車のDT-6110にも付いていた、70年代のオーソドックスなカンチです。クリテリウムと同じく、パッドから出ている棒を単にはさむだけの構造なので、リムに対して上下にしかシューを調整出来ず、カンチ台座の精度が甘いとシューがリムに平行になりませんでした。

 70年代末に微調整の出来るモデルが登場しました。シューの棒をはさむ部分に余裕を持たせ、上下左右に数度振れるため微調整が出来、シューが減ってきたときの再調整などにも便利でした。

右が微調整版です。貫通穴が左のものに比べて広くなっているのが判ると思います。この範囲だけ軸を振ることが出来ますので、360度方向に渡り、数度の微調整が出来ます。本体の形状もこれに合わせて円筒状から臼状になっています。

ダイアコンペ DC980

それまでの小振りなカンチに比べると、巨大な印象を受けます。ケーブルの受軸とシューの固定部分を同一直線状に持ってこないのと、受軸の長さを長くしてテコの原理で効きを強力にしたものです。MTB用に出てきたようですが、キャンピング車にも似合います。実際効きはいいのですが、横に張り出すので草むらの中では不利でしたね。

ダイアコンペ DC981

DC960とよく似た格好ですが、このモデルよりインナーケーブルが両太鼓から片太鼓へと変わりました。そのためインナーケーブルの長さが調節できるようになり、カンチの微調整がしやすくなりました。

ダイアコンペ DC982

これもDC980と同じくケーブル受軸とシューの固定部分が分かれていますが、受軸の長さは980に比べると短くなり、通常の長さになりました。

ダイアコンペ DC983

DC982と同じような設計ですがシュー固定部分がリム側に寄っています。MTB用のフォークはランドナーなどのフォークに比べて幅が広いため、このようにリム側に寄せたものと思います。このため、MTB用のカンチの一部はランドナーフォークにはクリアランス不足で入らないことがあります。

ダイアコンペ DC986

MTB用カンチのため受軸が垂直になってきており、形はVブレーキに近くなってきます。このモデルあたりからスプリングを引っ掛ける形式から、シマノのように中で固定するタイプへと変わりました。

ダイアコンペ DC987

MTB用。ますます一本軸に近くなって立ってきました。ここまで立ってくるとインナーワイヤが横よりも上に引っ張られることになり、効かないカンチブレーキの元になったのではないかと思います。

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