シマノ フリーハブ

 初めてのフリーハブ、デュラエースEXが出たのは70年代終盤でしたが、その頃はO.L.D.120mmハブに5段ボスフリー、126mmハブに6段ボスフリーが標準でした。その後ウルトラ規格の出現で7段はではボスフリー、フリーハブともに出ましたが、8段になるとO.L.D.が130mm必要になり、その構造上の理由から8段以降はフリーハブハブ一色となります。

 

 ボスフリーとフリーハブではフリーの構造は似ていますが、ハブの構造に大きな違いがあります。ボスフリーと勘合するハブは、その構造上フリー側のボールがボスフリー本体より内側に来ますので、軸を支えるボールの位置が左右でアンバランスになります(左上)。これに比べてフリーハブはフリーがハブに一体化されているためフリー本体内にフリー側のボールを内蔵することができ、ボスフリーに比べて左右のボール位置のバランスが良くなります(左下)。右はデュラエースのO.L.D.126m用リヤハブシャフトですが、ボスハブの右側球押しがフリーハブに比べて内方にあるのが判ります。ただ、フリーハブでも72Dura(EX)、73Dura(AX)と74Dura(NewDuraAce)では左の球押しの位置が変わっていますし、製品によってはボスフリーの位置に近いものもあるようです。80年代にスプロケットの多段化が進み、O.L.D.130mm,8段になった時点で上位機種はすべてフリーハブに移行してしまいました。

 

デュラエースEX(72デュラ)

FH-7250 FH-7260

 1978年頃に登場した初代フリーハブです。O.L.D.は120mmと126mmで5段(120mm・FH-7250)と6段(120mm,126mm・FH-7260)のレギュラーUG仕様でした。当時外国製の高級品やデュラのボスフリーの歯はオロ仕様でしたのでEXのスプロケットもオロ仕様でしたが、ボスフリーと仕上げが違うようですぐに禿げていました。サンツアーは同時期にウルトラ仕様の7段ボスフリー(ニューウイナー)を出していましたので、2代目EXはウルトラ仕様にして6段(FH-7261)と7段(FH-7271)になりました。シャフトや玉押しの考察はフロントリヤへどうぞ。

 

 デュラエースEXと同時期にフリーハブ仕様の600EXも出ていました。歯は仕上げが違う程度で互換がありましたが、トップのネジだけはデュラと違って34.6mmと少し大きくなっています。またツーリングを意識していてかラージフランジの製品も出ていました。
 登場当時のカタログではデュラエースEXのリヤハブは120mm(5段)と126mm(6段)の2種ですが、600EXは5段用(120mm、124mm)、6段用(120mm、124mm、126mm)の5種類の記載があります。

 当時のボスフリーの最小ギヤは、デュラエースが13Tに対してサンツアー・ニューウイナーはオーバーTop方式で(6段Topの外側に小径のネジを設けて)12Tを実現していました(左)。フリーハブはボスフリーに比べるとネジ径が34.6mmと小さいため600EXでも12Tを実現できましたが、デュラEXでは谷にネジを切った独自の規格を採用し、当時最小の11Tを出してきました。そのためにUG規格のTOPネジ径はデュラ(32.0mm)とデュラ以外(34.6mm)で違うものになってしまいました。

 

デュラエースAX(73デュラ)

 80年代初頭はエアロブームが吹き荒れた頃で、シマノも風洞まで作ってエアロパーツ(AX系)を出してきました。この頃私はサイドバックをつけてガンガン走っていた頃なのでエアロなどに興味も無く、パーツも持っておりません。ただ、当時OBから「ほしいエアロパーツは」と聞かれて、「エアロサイドバッグ」と冗談で答えたことを未だに覚えています。それでも、エアロボトルが出てきたのには、笑ってしまいました。シャフトや玉押しの考察はフロントリヤへどうぞ。

ニューデュラエース(74デュラ)

 エアロブームも一段落して、やっと次世代デュラエースの登場です。この頃はウルトラ規格のナローチェーンも浸透してきて、O.L.D.126mmでウルトラ7段の製品が主流になりつつありました。それと共にシマノのインデックス(SIS)の登場や、O.L.D.130mmの8段、STIの出現とHGカセットへの切替など大きな変革が起こったため、74デュラはいろいろと派生種が出ていました。

 

FH-7400 (O.L.D.126mm・130mm)

 73エアロの反省からか、74デュラはオーソドックスな作りです。トップナンバーのFH-7400は6・7段に対応しており、6段用のFH-7400-6と7段用のFH-7400-7がありました。なお、私のFH-7400のO.L.Dは126mmですが、カタログ上では130mmのFH-7400もあるようですので「O.L.D.が130mmだから8段対応だ」とは言い切れないようです。

 

 6段と7段の本体に差異は無く、スペーサー位置の左右入れ替えだけで対応していました。パーツリストを見てもEのワッシャのみ入れ替わっています。シャフトや玉押しの考察はフロントリヤへどうぞ。

 

 カセット厚は6段で29mm、7段で31mmと2mm違うため、ハウジングの長さも6段用(32mm・デュラEX)に比べて34mmと2mm長くなっています。グリス充填用ホール(右)も出来ましたが、整備毎にシャフトを分解するなら必要ないですね。

 

FH-7402 FH-7403 (O.L.D.130mm)

 FH-7402はO.L.D.が130mmに延長されて8段カセットが入るUG規格のフリーハブです(左)。UG規格のデュラですので当然Topは独自規格の32.0mmとなっておりますが、程なくHG規格へ移行したので短命に終わっています。FH-7403はO.L.D.130mmのHG規格フリーハブです(右)。ロックリング用のネジがフリー本体の内側に切ってありますが、外側山側にもネジ切りがされていて、UG規格の34.6mmTopが入るようになっています。UG規格のカセットはHG規格にも入りますので、600などデュラ以外のUGカセットが使用できるように配慮されているのかと思っていましたら、Topが34.6mmのデュラギヤが8速のみ存在するのですね。CS-7400-8のTopには7402用32mmTop(品番下二桁01)と7403用34.6mmTop(品番下二桁00)の2種類が出ていました

  

 FH-7402・7403が出た頃のO.L.D.は126mmが主流でしたので、130mmのハブを入れるのは4mm広げる必要がありました。ただし、フレーム修正はおおごとなのでそのまま嵌め込んでいたのですが、嵌め込みやすいように左側ロックナットのみ角を削った物にして入り易くしていました。パーツリストの J がそれに相当します。

 

 FH-7403の次は9段対応のFH-7700になりますが、この頃になると互換性を考慮しなくて良くなったのかUG規格のネジ切りは無くなり、ロックナットも左右同じ物になっています。

 8段以降のHG規格はデュラを含めて全グレードで共通となり、10段までフリー本体の基本仕様も変わらなかったため、8段HG規格のFH-7403にも10段カセットが入るそうです。ただし、FH-7700で復活した11TトップギヤはFH-7403には入りません。パーツリストで見てみますと、FH-7403ではカセットの山が最後まで伸びていますが、FH-7700以降は先端の2mm程度手前で止まっています(コンパクトボディと言うらしい)。また11Tトップギヤはツバ付ですが、外側から2mmは強度の問題からかスプラインが切ってありません。結局、この部分が邪魔になってFH-7403では11Tトップが使えないようです。それでは、FH-7403の本体の溝を削るか、11Tトップのスプライン部分を削れば入るかと言えば、入るそうです。ただし、強度は落ちますので削る方は自己責任で。
 なお、ハブ玉押しの話はこちらへどうぞ。

 

カセットの分解

 フリー本体の分解図を見てみましょう。カセットフリーも構造はボスフリーと同じですので、蓋を外して中子と外筒を分離します。2箇所あるボールやラチェットの爪も同じ形式ですので、整備方法もボスフリーと同じです。ただし、蓋を開ける工具が特殊でかつ販売終了なのが困る所です。

 

蓋の着脱

 TL-FH40(左)。適応はDura-Ace AX,EX(UG),ES,600 AX,EX,ADAMAS AX,SQ,SK,SN,5A/6Aとなっています。姉妹品としてTL-FH20(中・後継品TL-FW03)があり、Dura-Ace以外での適応となっていますが、ともに販売終了品です。使用方法は、蓋にある2ヶ所の窪みに工具を勘合させて回します。なお、Dura-Ace EXの初期型(FH-7250・7260)にはこの工具は使用できません。

 

 スパナで緩めてもよいのでしょうが、溝をナメやすいので上記の方法が推奨されています。まず、工具を上向きにバイスに固定して、その上からフリーをホイールごと載せます(左)。次にホイールを持って時計回りで緩み、反時計回りで締ります(逆ネジ)。この方法だと勘合部を上から押さえつけてずれ難くなるのと、ホイールの大きさでトルクが稼げます。

 

 Dura-Aceで蓋が本体から外れ難い場合は、TL-FH40の反対側のネジ切り部を蓋にねじ込んで外すように指示されています。構造上の問題なのでしょうかね。

 問題はこの工具がとっくに廃盤と言う事です。Netを見てみると色々と工夫されていますが、ソケットを加工して作成出来るようです。割と簡単に出来るようですが、耐久性が低くてナメやすいそうです。その他にはスパナ2枚を工夫して開けている方もおられました。スパナで開けるのは良いとしても、きっちり締るのか不安の残る所です。

 工具を自作しようと思ってましたら、思いのほか早くに工具が手に入ってしまいました。なのでもう自作することは無いと思いますが、これから製作考えている方用にノギスで採寸しておきました。目視の寸法ですが、ご参考になれば幸いです。

 

カセット本体の着脱

 本体を外す場合、ボスフリーでは専用のリムーバーを用いましたが、カセットフリーでも初期の頃は専用のリムーバーを用います。ただし、最近のカセットフリーは6角レンチで回す方法なので、初期の頃だけ特殊のようです。その中でもDura-Ace EXの初期型(FH-7250・7260)と74系デュラは、8溝の専用特殊工具TL-FH10が必要になります。

 

 外し方は内蓋と同じく専用工具をバイスに挟んで、ホイールを上に載せて回転します。本体は正ネジですので、反時計回りで緩みます。締めこみは、ハブ本体との間にワッシャを1枚挟みますが、グリスは塗らないようにと指示が出ています。ただ、フリーボディ交換以外では必要ない作業で、フリーボディも特殊で他シリーズとの互換も無く、今となっては無くても困らない工具のようです。
 カセットフリーが壊れたけど、どうしても7400のハブが使用したくて、なおかつ予備のカセットフリーが手元にあるのにリムーバーが無い場合(なんてレアな場合だ)は、外筒を外して、(どうせ壊れているのだから)破壊覚悟で中子にバイスを掛けて回せば外れると思います。はめる時は工具使わなくても順ネジですので、踏み込めば締るだろうと思うのですが、ボスフリーと違ってフリー本体にハブの内ワンが組み込まれていますので、キッチリ締め込んでから組み込まないと玉当たりの調整が狂いそうですね。専用工具は無いけれど、どうしても外したい方はこちらへどうぞ。

 

 e-bayでは時々TL-FH10が出品されるものの、落札価格が5桁になるので様子見をしていましたら、2015年に入ってヤフオクで業者が流し始めました。ただ、題名が「デュラエースの工具」のみで説明文にも用途不明になっていたためか、定価の2倍程度で運良く購入できましたので、簡単な寸法を上げておきます。カセットフリーに差し込んでみましたが、ピッタリ嵌るわけではなくて、多少ぐすぐすしていました。まあ、実用上は問題ないのでしょうね。

 

 Dura-Ace EX(UG)(FH-7261・7271),Dura-Ace AX(FH-7370・7360),600 EX(FH-6261・6251・6250・6263・6253・6262・6252),600 AX(FH-6360・6361),SQ(FH-Q620),SK(FH-K620),SN(FH-N620)はTL-FH30を使用します。こちらは最近廃盤になったようで、メンテナンス不足の楽天のHPで「メーカー出荷品2〜7日」なんて表示がまだ見られました(2013年)。構造的にはカセットがハブに押し込んであるだけなので、カセットの周囲をTL-FH30で掴んでハブから引き剥がすように外します。

 

 装着する時は逆に押し込むわけですが、ハンマーで叩いて押し込むわけにもいきませんので、シャフトと玉押しを利用して押し込みます。方法は、玉押しの前に専用のワッシャーを付け、ワッシャーを介して締めこみます。代用品でも出来そうですが、径や厚さが微妙なのでしょうね。

 上記以降の製品では、6角棒でねじ込む筒状の部品で押さえ込むのが主流になっているようです。装着形式は上記と同じように見えますが、外す時はポロっと外れるのでしょうね。

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