チェーン

 チェーンは自転車部品の中でもタイヤと並んで交換頻度の高い部品ですが、JISで規格化されているため汎用性の高い部品です。それでも種類はあるため、すべての部品が共通で使用できるわけではありません。チェーン間のピッチは12.7mm(1/2インチ)に統一されていますが、外リンク外幅(以後外幅)と内リンク内幅(以後内幅)の違いによって種類が分かれます。

  

単段用チェーン (1/2×1/8)

 シングルチェーンとか厚歯用チェーンとか言われている、単段や内装変速機用チェーン。内幅が1/8インチなので、1/2×1/8などと呼ばれています。外装変速用のチェーンに比べて内幅が広いので、対応するスプロケットも厚くなるため「厚歯」と呼ばれて区別されており、実用車に使用されています。箱には「1/8」とか「single speed」などの記載がありますので、間違わないでください。なお、1/8単段用はこれ1種類だけなので、1/8用であればどれでも使用できます。

多段用チェーン

 外装変速機に使用するチェーン群で薄歯用などとも言われています。昔からある、ノーマルとかレギュラーよ呼ばれているチェーンは内幅2.4mm(3/32)、外幅が8.2mm以下のもので、5,6段変速用でした(左)。80年代に入り、歯間をつめて多段化したスプロケット用のチェーンとして、内幅はそのままに、外幅だけ7.3mm以下に狭くしたナローチェーン(ウルトラチェーン)が出ます。6,7,8Speedとか、7,8Speedなどの表記がありますが(左中)、内幅は同じ2.4mmなので、レギュラーのスプロケットにも使用できました。時代は進んでさらに多段化されますが、9段以上は内幅が2.2mm(11/128)と狭くなって「9-speed」(右中)とか「10S」(右)などと表示され、8段までには使えなくなってしまいました。

 

 レギュラーとナローはピンの幅が違うだけなので、ナローチェーンをレギュラーチェーンの代わりに使用することは可能です(逆はピンが引っかかるので使用不可)。9段以降のスーパーナローは内幅が狭くなるので互換性は無くなります。

 

レギュラーチェーン (1/2×3/32)

 70年代のスポーツ車に使用されていた製品で、内幅2.4mm(3/32)、外幅8.2mm以下で、5,6段変速に使用されていました。会社は大同(DID)を筆頭に、報国(HKK)やIZUMI、江沼などのチェーンが出ていましたが、70年代後半に入ってシマノがUGチェーンを販売し始めます。その後、外幅を狭くしたナロー規格が出るので、この規格は区別するためレギュラーと呼ばれるようになりましたが、販売当時は知る由も無く、箱のどこにもレギュラーなんて文字は載っていません。なお、現在のチェーンの箱は長方形が主流ですが、この頃は正方形が主流のようですね。

 

 70年代後半に入って、シマノがツーリングコンポとして600シリーズを出しますが、それと同時にチェーンの外プレートを膨らませて変速性能を上げた「UGチェーン」を出しています。外プレートをピン頭の高さまで膨らませることで変速時にスプロケットに当たりやすくして、変速性能を上げているそうです。UGチェーンはレギュラー時代に出たのでレギュラーとナローの2種類が存在しますが、ナローはピン幅が狭くなっていますので、当然UGの膨らみ幅も狭くなります。ナローUGの外プレートは膨らむと言うよりは内側がカットされれいるように見えます。

ナローチェーン(ウルトラチェーン)

 6段用のボスフリーに7段の歯を入れるため、歯間を狭くしたウルトラ規格のボスフリーが80年代前半に出現しましたが、チェーンもそれに対応して外幅だけ1mm弱短くしたナローチェーンが出現します。内幅やスプロケットの厚さに変更無かったため、ナローチェーンはレギュラーシステムでも使用できて普及が一気に進みましたが、レギュラーチェーンはナローシステムでは使用できないため、明示の意味をこめて箱やチェーンプレートに「NARROW」の文字が入っています。まあ、サンツアーだけは(ウルトラ)を使っていたようです(右)。ナローチェーンまではOEM含めて各社が販売していましたが90年代前半にはサンツアーも無くなり、国産ではシマノのチェーンを選択するしか手がなくなっているのが現状です。それでも今のチェーンで昔のシステムが動けば問題ないのですが、多段用高級チェーンは多少柔らかいのとプレートの設計変更により、旧システムで使用すると変速性能が落ちるなどの噂もあり、消耗部品だけに悩みの種です。特にサンツアーAP系のフリーやインデックスを使う場合は、対応チェーンでないとスッキリした変速が味わえない気がするのは旧車ファンにとっては残念な所です。なお、この頃のチェーンは現在のアンプルピンのようなシステムではなくて、どの部分の駒からでも付け外し出来るものでした。

 

Zチェーン TZ-6000 \1,250

 報国製のOEMチェーンと思われます。 アウタープレートの曲がりは無くて変速にはやや硬い感じがし、インデックスよりフリクションでの使用の方がなじみます。

ULTRA6 UC-6000 \1,680

 元祖ウルトラチェーンで報国製のナローチェーン、HKKの文字まで入っています。5速用ハブに6速入るのは、当時としては画期的でした。

CYCLONE SP-6100 \1,480

 サンツアーブランドで出し始めたチェーンで曲げ幅はまだ小さく、当時のラナーに比べて少なめでした。変速性能は後に出たAP系のほうが良かったと思います。

SUPERBE-PRO SP-6000 \1,890

 サイクロンと同系統でSilver or Goldの仕様です。SUPERBEに設定されており、APが出る前の物ですが、既にDH-Aチェーンとして出ていました。AP01と同じくアウタープレートは外側に広がっていますが、広がり方が少なくなっており、AP01に比べるとHigh側への移行が若干もたつく感じがします。

APチェーン CH-AP02・01 \2,600

 SUPERBE-PRO(AP02)、XC-Pro(AP01)のセットとして出ていたようです。DIDのスーパーシフトのOEM版で、銀/銀の豪華使用でDH-A処理もしてあります。形状はアウタープレートが広く扇型に広がるタイプで、ACCUSHIFTのINDEXにはこの形状が一番あっていると思います。

CH-AP10 \1,350

 GPX & RADIUSに設定されてます。AP-02の下位グレードに当たるようで、銀/黒のチェーンです。

CH-AP1211 \1,580(AP-Kカセットコグ専用)

 ダンベルのような形をした独特のAPKで、SL(AP12)、XCコンプ(AP11)に設定されてました。話ではAPKコグ専用に設計されたため、他のボスフリーで使用するとチェーン切れなどのトラブルを多発するチェーンと言われてました。

CH-AP21 $11.99

DIDのスーパーシフトのOEM版で、APチェーンの普及版です。値段のランクも同じです。

D.I.D ラナー \2,350

 アウタープレートを曲げだした初期の頃のもので、インデックスではない通常のボスフリーで使用していました。私も使用していましたが、変速性能が特に良かったような記憶は残っておりません。

D.I.D スーパーシフト \2,200

 AP系チェーンを自社で販売していたもので、SuperLanner,SuperShifterなどのネーミングがあります。廉価版の割にはインデックスによくマッチしていました。黒/黒を始めとして、銀/黒、金/黒、銀/銀などの仕様があるようで、上位機種はDH-A処理です。

Shimano CN-UG50

 シマノUGチェーンの廉価版です。UGチェーンはレギュラーとナローが混在しますので、明示的意味でも「NARROW」の文字が刻んでありますね。廉価版にしてはコストかかっていると思います。CN-UG51まで出てからHGに移行したようです。

Shimano 600EX CN-6208

 600のUGチェーンです。600にもレギュラーとナローの両方が出ていましたので、「NARROW」の文字が刻んであります。

Shimano Dura-Ace CN-7400
 Dura-ACEのUGにもレギュラーUG(QA-110)とナローUG(CN-7400)の2種類が出ていました。CN-7400は8速のUGカセットまで適応となっていましたが、8速UGはすぐに8速HGに変わってしまいました。

 

Shimano Dura-Ace CN-7401

 HGに変わって初のチェーンで、形はUGとほぼ同じです。レギュラーチェーンは無くてナローのみですが、まだ「NARROW」の文字が刻んでありますね。このチェーンから結合にアンプルピンを使用するようになりました。

Shimano CN-HG91

 HGチェーンはすべてナローかそれ以上幅が狭いスーパーナローでレギュラーは有りません。CN-HG40に始まりCN-HG50/70/71/90/91が6〜8速対応で出ています。ちなみに末尾の0-1がナロー、2-3が9速スーパーナロー、4-5が10速スーパーナローのようです。

 追記:これを書いている2015年初頭時点でCN-HG70/90/91が廃盤になっていて、入手可能な上級グレードはCN-HG71のみのようですね。

余談1

DH-α(DHA、D.I.D HPより)

ピンの表面に非常に堅いDHA皮膜を形成し、その内部にさらに高硬度の炭化物を分散する処理方法です。そのため、高トルク、高回転による過酷な条件でも高い耐摩耗性能を示し、さらに熱硬直にも優れた性能を発揮します。(パテント)

DHAを使用したのはラナー以降のようで、主に高級チェーンに採用されていたようです。親切な物にはDH-Aの文字がプレートに刻まれていますが、無くても銀&銀や金のチェーンでは使用されている可能性が高いらしいです。DH-Aは耐磨耗性能が高いため、長く使用できるそうです。

余談2

デュラエース UGチェーン

 1ランク下の600UGが\1200の時代に¥4500もしたチェーンです。見た目は600と大して変わりは無いのに、なぜに3倍もの値段なのかと思ってましたら、このチェーン、どうも特許取得前のDHA技術が使われていたそうです。私もS55年に購入してランドナーに使用していますが、洗浄のメンテナンスだけで30年近く経った今でも使用できています。クラブの2回生の時に替えましたので当時の走行は半端ではなく、ボスフリーのトップギヤも2回替えましたがチェーンだけは替えなくても使用できています。デュラのUGチェーン恐るべしです。

余談3

DID DHAで検索すると英文で何千件ものHITがありました。DIDのDHAは海外で大流行だなっと思ったら、DIDはdoの過去形、DHAはおなじみドコサヘキサエン酸でHitしまくってました(笑)。
DIDは今でもこの技術で単車のチェーンを作り続けています。

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