DIACPMPE サイドプルブレーキ(右出し)

 WINE-MANNと提携の頃から出ている由緒あるブレーキです。最初の頃は向かって右のワイヤー出し(以下右出し)が標準でしたが、噂ではカンパが向かって左出し(以下左出し)を始めてから、主流が左出しに変わったと聞いています。また、止め方も、80年頃からナット止めから沈頭止めに変わってきて、現在では一般部品を除いて左出しの沈頭止めが主流です。

 

DC500N

 右出しサイドプルシリーズのスタンダードタイプで、完成車によく採用されていました。また、右出しのサイドプルでは最後まで販売されていましたが、それでも近年ついに発売中止となってしまいました。

 本体は10mmナット二枚で止めてあります。スペーサーとしては前から文字入りアルミワッシャ、プラスペーサ(厚)、プラスペーサー(薄)が入っています(右図)。ワイヤアジャスタの基部はカシメで、ワイヤ止めは8mmのアルミ製袋ナットです。この基本構造はグランコンペに至るまですべて同じで、ピボットシャフトやアーチバネは規格共通で交換可能です。

 

 クイック、タイヤ止めの有無などでバリエーションがあります

Q500N(左)
スタンダードにクイックが付いたもの

QS500N(左)
クイックとタイヤ止めが付いたもの

G500N

 本体の曲がりが急になったのがG500Nシリーズです。Gシリーズはすべてタイヤ止め付きで、クイックカバーが付いたGX500N、ピボット止めネジが変わったGC500Nなどの種類があります。

 本体のナットは10mmと12mmになり、スペーサーはステンレス、銅?、白プラスティック、銅板へと1枚多いものに変更されています。ワイヤアジャスタは共通ですが基部はネジ止めとなり、ワイヤ止めは10mmのステンレス製になっています。

 

DCシリーズとGシリーズの比較

 本体はGの方が屈曲が強くなっており、「ちからコブ」なんて言われ方しています(左)。アジャスタもクイック付きになって基部がカシメからナット止めに変更され(中)、ワイヤ止めナットもアルミの8mmからステンレスの10mmになって強度が上がっています(アルミのナットは強度不足でナメ易かった)。Gシリーズ以降はピボットシャフトも空転止め用のスリットが入ってJAPANの銘入りになりました(右)。

 

グランコンペ GC500

 シリーズ最高級のグランコンペです。右出しの製品は短命で、真っ先に左出しのニューグランコンペへ変更されました。スタンダードが¥1,100の当時で\5,700もしたため滅多に見ませんでしたが、売れ残りが多かったのか一時期オークションでよく見かけました。

 ピボットシャフトとアーチバネはGシリーズと共通ですがそれ以外は良く似ていても新設計です。ワイヤアジャストは当時のデュラエースと同じくネジを抱え込むタイプで、肉厚も厚くなって強度が上がっています(左)。クイックはアジャスタと分かれてワイヤ止めと一体化し、基部も独自設計です(中)。スペーサーもプラ製品がなくなり、すべて銅板になっています。

 

製品の変遷

 スペーサーは一番上がDCシリーズ、真中がGシリーズ、下がニューグランコンペの物です。ブレーキの動きに関しては本体の中間に入るスペーサー(写真の左から2番目)が重要で、プラスティック製では経年と圧迫変化によるちぢみでガタが出ていることがあります。グランコンペは銅製でしたが、ニューグランコンペでは普通のステンレスワッシャになってました。
 アーチバネは通常上通し(右下)ですが、古い製品では下通し(右上)の物もあります。本体に引っかかる位置は共通ですので、ピボットごと交換可能です。

 

ブレーキの性能劣化

 ブレーキはシュー以外に劣化しそうには無さそうですが、それでも使用するに従って劣化してゆきます。本体に関しては使用するに従い、一番力のかかる本体のシャフト貫通部の穴が広がってゆきます。これが広がると本体のがたつきにつながり、ブレーキ時にガクガクと言った感じが出てきます(中:シャフトを下げた時、右:シャフトを上げた時。穴が楕円に広がっている)。ただ制動力にはさほど影響しませんので、劣化しても危険と言うほどではありません。それよりワイヤーの交換やワイヤ止めの増し締めのほうが安全上重要です。

 

カラーバリエーション

 一時期、カラー物もやっていたようで、黒や赤以外にも青などの製品もあるそうです。右の白は私が塗ってみました(笑)。

 

ピボットシャフト
ナット止め(上)と沈頭止め(アーレンキ止め・下)

上のほうがフロント用、下がリヤ用です。見てお分かりの様に長さがかなり違うので流用は出来ません。あえて流用するならばネジ径は同じですので、ナット止めのリヤを沈頭止めのフロントに使用することはできそうです。詳しい記事はこちら

右出しサイドプルの現況

 なぜ右出しにこだわるかと言うと、グランテックはその折畳み構造上、フロントに左出しのサイドプルが使い辛いからです(左・ただし、折りたためないわけではない)。右出しのサイドプルは現在でもアーチサイズ60mm程度の26インチ用は発売されていますが(中)、アーチサイズ50mm程度の700c、24インチ用の右出しは発売されていません。グランテックもトランジットと名を変えて未だに発売されていますが、車体設計が26インチ(旧グランテッククロスと同じ)になってアーチサイズも60mm程度の26インチ用を使用しています(右)。

  歴代でも昔のワイマン、CLB、600旧型ぐらいしか右出しサイドプルはありません。DC500Nは結構最近まで販売されていたようですが、さすがに需要無くなったのか製造中止となってしまいました。ただしDC500Nは低グレードの製品で、マスプロ車にも数多く採用されていましたので、中古の玉数は結構あるようで今でもオークションで時々見かけます。

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