ヘッドパーツの着脱

 ヘッドパーツの着脱なんて滅多にしませんが、レストア時にはよく遭遇します。専用工具で着脱すれば綺麗に行きますが、一生に1度や2度の作業へ数万円投資するのは、よほどの工具好き以外にはいないでしょう。近くに信用のおけるプロショップがあれば作業依頼する方が確実ですが、近くにいい自転車屋がない方、なんでも自分でしたい方は以下のような方法はいかがでしょうか。(注:以下の説明はノーマル(スレッド)ヘッドについての物です。アヘッドやインテグラルとは違いますので、ご留意ください)

まずは専用工具を使用した着脱を見てみましょう。

ヘッドワンポンチ \6,300(C-365・HOZAN)

 ヘッドチューブに圧入されているヘッドワンを取り外す工具です。先が割れている工具をヘッド内に差込んでワンに当てるようにし、上から叩いて外します。上下とも同じ方法で外します。

ヘッドワン圧入工具 \22,800(C-448)

 ヘッドワンを上下から挟み込んで圧入する工具で、大掛かりな上に高価ですが確実に垂直圧力をかける事が出来ます。
 また、ヘッドカップにボールが圧入されている物は、アタッチメントで対応できるようです。

ボールレースリムーバー \38,700(C-440)

 昔はプロもコの字型した簡単な工具で打ち抜いていましたが(左)、フォークにサスペンションなどが付くようになって、ボールレースを抱え込む方式になったようです。これも大掛かりな上に高価です。なお、多少安価なクラウンレースリムーバー(5千円程度)も出ているようです。

ボールレースセッティングツール \12,400(C-445)

 昔はプロでもパイプ状の物を介して、上からたたいて圧入していましたが(左)、最近ではフォークコラムへの固定を介して圧入ができるようです。

4つの工具で8万弱しますが、簡易工具を使用してもそれなりに出来ます(あくまでも、それなりですが)。ネットでもいろいろな方法が紹介されていますが、私も同じような方法で着脱しています。

ヘッドワンはずし

 写真のような長ネジとワッシャ、ナットを使用して行います。長ネジは25cm程度の長さ、ワッシャは外径32mmのワッシャを糸ノコで半分に切断し、外径が29mm程度になるように調整します。あと割れワッシャを固定する小さ目のワッシャ(22mm)2枚とナットが数個です。ホームセンターで数百円程度で買えます。

 最初に外すのが一番難しいです。まず最初にヘッドチューブ内に割れワッシャを入れます(中)。次にナットのついた長ネジを通し、外側からワッシャとナットで割れワッシャを固定します(右)。割れワッシャを使う意味は、ヘッドチューブ内径よりワンの内径の方が小さいため、そのままでは入らないので、半分に割って入れて、中で円形にするためです(中)。そして反対側から一気に叩けばワンは外れます。
 反対側のワンは片側のワンが外れていますので、ワッシャを組み上げたままヘッドチューブ内に入れて、そのまま叩いて外します。

 ワンを外した後のヘッドチューブです。フェイスカッターで削って平面を出すと気持ち良いくらいハンドルが回るそうですが、高速回転する部分でもないのでこのままにして作業を続けました。

ヘッドワン圧入

 厚めの角材を用意して、ドリルで穴を開けておきます。その後写真の様にワンと工具をセットして、ナットを締めこんで圧入します。簡単そうですが、最初に水平に入れ始めるところが難しく、ワンを他の人に支えてもらった方がよさそうです。

 

一連の作業の中で、この作業が一番難しく神経質です。私見ですが、

1)フレームに対して初めての挿入ならプロ工具を使用するほうが無難です。このやり方は、あくまで交換時で、既に道筋がついているのが前提ですから。
2)押さえ板に鉄板を使用する方もおられるようですが、私は厚めの木片(材質は柔らかめ)を使用しています。これはパーツ保護とともに、柔らかめの木の材質で多少なりとも均一に力が掛からないかと思うからです。
3)嵌め込み時にセンターがずれやすいので、中心を確認できるよう押さえ板にマジックで円を書いています。

 以上のようなやり方で何回か作業していますが、それなりに入っているようです。プロが専用工具で作業する精度には遠く及ばないと思いますがレースをするわけでもなく、最新カーボンフレームならいざ知らず、昭和の時代の中古鉄フレームへ鉄製のワンを挿入する作業ですから、他の部分の精度を鑑みて、この程度で満足しています。なお、カーボンフレームやアルミ製ワンでは、部品破壊の可能性もあることをご承知ください。

 

ボールレース(下玉押し)はずし 

 コの字型した工具で後から打ち抜きますが、写真のような簡易工具で対応しました。角材に35mmのL字金具を向かい合わせに止めて、玉押しを裏側から打ち抜きます。要点は、使用するL字金具は厚さ3mm以上の硬い物(手で曲がる程度なら、曲がってしまう)、当たる面が平面の物(丸いと局所的に力がかかる)。専用工具は玉押しにぴったり当たるように湾曲していますが、簡易工具ではそこまで望めません。ですが、外す玉押しは再使用しないので、豪快に抜いています(あまり豪快にするとフォーク基部を傷めますので要注意)。
 たたくのがチョットと言う方は、ヘッドワンと同じ方法で圧出も出来ます。ワン圧入と同じくフォーク内にネジを通して反対側を固定してボルトを締めていけば圧出できますが、そこまでする作業でもないとも思います。

 

ボールレース(下玉押し)圧入

 これは専用工具と同じように叩いて入れるのですが、塩ビの水道管HIVP-30を25cm程度に切って、上から叩いて圧入します。HIVP-30は内径が30mmより少し大きい程度ですので、少し大きめですがこれで我慢します。なお玉押しに当たる面は垂直になるように塩ビを切断してください。

 

 これもヘッドワンと同じように圧入出来ます。塩ビ管をコラムより少し長めに切っておき、クラウン下部にボルトを通して締めていきます。この時、内径を少し削った不要な下玉押しを上図の様に向かい合わせに置けば、玉押し部に塩ビ管が当たらず、均一に力がかかります。この作業はワン挿入に比べると、比較的簡単に行えます。

 

2013年追記
 数年前にこのHPを作成して以降、レストア機会が増えたため数回着脱行いました。さすがに簡易工具では面倒くさく、工具の値段も下がっているようなので再検討してみました。

ヘッドワンリムーバー 

 自作工具でも問題なく外れますし、外すだけなら精度の問題などもさほどないのですが、工具を組み立てるのが面倒くさいです。専用ツールはパークツールのRT-1が売価で\5,000前後、これの相当品とされるパチものが\2,500前後で出回っていますが、オークション特価\1,000なんて製品まで出まわっていました。さすがに1/5以下の値段では頻回使用で爪が曲がる可能性大ですが、ネタ用の人柱となるべく購入してみました。やってきたのはBikeHand YC-1858S(台湾製・中)でメーカー品なのには少し驚きました。さらにNetのHPにも記載があって、2年保証を謳ってます。4回(2Set)使用しましたが、爪に多少傷が入った程度(右)ですので、しばらくは使用に耐えそうです。
 使用感ですが、簡易工具に比べるとヘッドチューブ内径にぴったり固定しますので、力いっぱいたたいても軸ずれが起こらず、力のロスも無くなって外しやすくなりました。\1,000ですのでお値打ち品ですね。

  

クラウンレースリムーバー(下玉押し外し)

 抱え込む専用工具は現在でも2万以上しますが、横から楔状の金具を押し込んでいくタイプなら\5,000を切る値段で販売されています。ただ、これも自作工具で問題なく外れますし、マイナスドライバーでコツコツよりは効果的なので当分は自作工具を使用しそうです。

ボールレース圧入(クラウンレースセッティングシステム)

 圧入方式もありますが、パークツールなどはアタッチメントが付くものの、相変わらず叩き入れる方式です。値段も1万を越えていますが、同等を謳う相当品は1/10の¥1,500なんて物もあります。ただし、これも自作工具の圧入方式で、不要下玉押し逆付けでいくと綺麗に圧入出来ますので自作工具で問題ないようです。

ヘッドワン圧入

 これが一番の問題です。圧入は数回しかしていませんが、ワンの入れ始めを水平に保つのが難しく、やり直しやプラハンでコツコツ修正などをしてました。まあ、鉄フレームに鉄製のワンだから良いのですが、アルミやカーボンではこうラフには行けません。結局これだけは専用工具を購入しました。安価な物を探していましたら、¥4,500で無名の工具を売っていましたが評判などは不明なので、¥5,400で売られていたCyclus(ドイツ)の圧入工具を購入しました。並行輸入品で箱や説明書もなくてハネ品かもしれませんが、まあよいでしょう。どういう販売経路かは知りませんが、オークションで買ったのにamazonから発送されてきました。

 

 Cyclus Headset Press:評判では安価な割に良く出来ているそうです。使用方法は単純で、上下にヘッドカップをセットして締めこむだけです。下方のハンドルはネジ式で、リングはめ込みの他社製品に比べるとセットに時間かかりますが、コストの関係なのでしょう。締めこむ側は反対側に比べてネジピッチが細かくなっている親切設計ですが、ボールベアリングは弱いようで破損報告も見られるため、壊れたら国産パーツ(HOZAN C-448-1 \2,100)に変更しても良さそうです(個人使用では、壊れるほど頻回に使用しないでしょう)。

 

 長さは全体で356mmで、組み込んだ状態での有効長は240mm程度でした。高級品に準備されているエクステンションポールなどはつかないので、小径車などの長いヘッドチューブに対応できない事もありそうですが、我が家で一番長いグランテックミニでも201mmでOKですので、よほど長いヘッドチューブ以外問題ないでしょう。

 

 手持ちのノーマルJISヘッドの内径を測りますと、RB-661やGR-24など鉄ヘッドの内径は27.2mm、HP-7400やSprintなどアルミヘッドは26.6mmでした。ヘッドカップ一段目の直径は26.4mmですのでヘッドパーツ内径にほぼぴったり入ります(左)。ピッタリなほどセンターが出やすいでしょうが、オーバーして入らなければ作業不能になりますので、各社ちょっとずつサイズが違うようです。押し込みは2段目の肩で行うのですが、肩幅は1.7mmのためヘッドパーツの口の部分のみを押すようになり、ワンの部分には力が掛からないようになっています(中)。ヘッドチューブは内径30.0mm(ノーマルJIS)ですので29.8mmの2段目がピッタリ入ります(右)。

 

 圧入工具は各社から出ていて同じような物と思っていましたが、ヘッドカップ直径は少しずつ違っていました。Cyclusは1〜1-1/8対応なのでヘッドカップは4段ですが、1〜1.5まで対応のHOZANは5段あります。直径も少しずつ違っていて、幅広く対応しようとした製品は1段目の直径が小さくなるようです。Netで売られているメーカー詳細不明品(中華製?)は1mm刻みの大雑把な表示で、2段目が値どおりの30.0mmならノーマルJISの場合1段目でフレームを押すことになってしまいます。パークツールも1〜1.5までのワイドな対応をしていますが、1〜1-1/8には専用ヘッドカップアダプター(#530-2)が別に付属していたりします。結局、ノーマルJISの旧車を扱うだけなら、1段目がピッタリ入って赤矢印でワンを押し、緑矢印できっちりヘッドチューブに当たるCyclusで十分のようです。

 

リテーナー脱落防止ヘッド

 自作工具がワンの外周を押すのに対して、専用工具は内径部を押すためワンの変形・破損が防げるのですが、リテーナー脱落防止カバーが付いているUltimaやTGHC-1へはそのままでは作業できません。TGHC-1はリングを外せばカバーが外れるので、全て外せば作業できますが(玉はリテ−ナーでは無くてバラ玉だった)、Ultimaは引っかかりがあって分解できず、ワンの外周をそっと押して入れるしかなさそうです。

 

ワン部を押すアタッチメントがHOZANには用意されていて、 外径: 50mmφ(1")、52mmφ(1-1/8")、65mmφ(1.5")の3種が上下セットで販売されています(C-448-4)。ただし、3種6枚で\12,500と、かなり強気な値段設定です。これは頻回使用するプロショップ用で、個人で用意する物ではなさそうですね。

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