ヘッドパーツ

ヘッドパーツはフレーム本体とフロントフォークとを連結する回転パーツですが、大きく分けてスレッドとアヘッドに分かれます。旧車や一般車はスレッド(フォークにネジが切ってあり、ナットで締めこむタイプ)ですが、最近のスポーツ車はアヘッドがほとんどのようです。ここでは、旧車に多く採用されていた、スレッドに付いて書いてみます。

 

サイズ

スレッドのヘッドパーツもノーマルサイズ(JIS)、ノーマルサイズ(ISO)、オーバーサイズなど色々と出ていますが、旧車はほぼノーマルサイズのJISサイズでした。

1)ノーマルサイズ(JIS)
 旧マスプロ車はほぼこのサイズです。ヘッドパーツ外径が30.0mm、下玉押しの内径が27.0mmで箱には(JISJS)や(30φ 27φ)などの記載があります。これに対応して、ヘッドチューブ内径は30.0mm、クラウンレース外径は27.0mmになっています。

2)ノーマルサイズ(ISO・イングリッシュENG/イタリアンITA)
 ヘッドパーツ外径が30.2mm、下玉押しの内径が26.4mmで、本体の方もこれに対応してヘッドチューブ内径が30.2mm、クラウンレース外径が26.4mmです。これは呼称にあるように外国のフレームに採用されていたようですが、国産オンリーの私にとっては馴染みの無いパーツでした(笑)。
「ノーマルサイズのこの2種類は0.2mm差のため、ノギス等で正確に計測して判断することが必要です」とNetなどで書かれていますが、国産マスプロ車のフレームならよほど捻くれた車体で無い限りノーマルJISのはずです。

 JISとISOの差ですが、ヘッドチューブ内径はISO>JISで、クラウンレース外径はJIS>ISOですので、JISの車体を削ればISOのヘッドパーツが入ります。ただし、削れても盛ることは出来ませんのでJIS→ISOへは変更できますが、ISO→JISは出来ません(舶来のISOフレームにJISは入らないと言う事です)。

 

種類

 ヘッドパーツは上玉押しとナットで締め付けるロードタイプ(上)と、ギザギザの付いたワッシャで緩み止めをするマイクロアジャストタイプ(下)の2種類があります。
 ロードタイプは締め付けの微調節が出来ますが、輪行時の煩雑な分解には向きません。マイクロアジャストタイプはランドナーに使用され、フロントホークを抜く輪行方式ではリテーナー脱落防止機構がついているものもあります。

 

リテーナー脱落防止機構

 ランドナー時代の輪行はフロントフォークを抜く方式でしたので、輪行時はヘッドパーツを付け外ししますが、分解時は何もないとリテーナーが脱落しますので、脱落防止用の工夫がされていました。輪行車として登場したDT-6110はリング状のカバーによって脱落防止しており、リテーナーが脱落しないのは良いのですが、輪行時にゴミを拾うのが難点でした。また、このリングは外れやすく、輪行時に地面に接する上部ワンのリングは、破損や紛失がよくおこりました。

  

 BSのリテーナーがたびたび破損するため、同時期に出ていたTANGE RB-661(左)に交換していました。これは内周に嵌め込んだリングによって押さえていますので、破損は無くなりましたが相変わらず輪行時にゴミを拾っていました。80年に入ってニキョウから全面シールドされたUltimaが出ています(中)。シールドでゴミを拾わず、軽合金製の意欲的な製品でしたが、価格の問題からかあまり見かけませんでした。RB-661は2000年初期まで発売されていましたが、ついに発売中止となり後継機としてTGHC-1(右)が出ています。これはUltimaのようなシールドタイプですが鉄製で、リングでシールドが止まっています。最近は改版して、これがRB-661Cを名乗っているようです。

 

整備

 ヘッドパーツには上下2箇所にベアリングが入っており、大きさはペダルと同じ5/32がほとんどで、最近では16玉のリテーナー形式になっています。リテーナーには向きがありエッジの出ている方に内ワンが、出ていない方に外ワンが来るようにします。逆でも一応入りますが、エッジが外ワンに当たるためベアリングが当たらず、外ワンに傷が入って壊れます。

 

 リテーナーの向きはロードタイプとマイクロアジャストタイプで異なります。下ワンはともに内ワンが下方ですのでエッジの出ているほうが下方になります。上ワンはロードタイプでは同じく下向きですが、マイクロアジャストタイプでは逆の上向きになります。これはフロントフォークを抜いた時、リテーナーが車体本体に残るようになっているため、外ワンがともに車体側になってリテーナーの向きが背中合わせの逆向きになります。この方法でも良さそうですが、外ワンが上方に向くと雨水がたまりやすくなるので、ロードタイプでは上下とも外ワンが下向きについているのではないかと思ってます。

 

スタックハイト

 ロードタイプ、マイクロアジャストタイプ共に内径は共通ですのでどちらでも使用できますが組幅は製品によってばらつきがあり、すべてがうまく入るわけではありません。ヘッドの組幅はA+Bの値で、製品では30mm〜43mm程度のばらつきがあります。一方フレームの組幅はD-Cの値になりますので、A+B>D-CならOKと言う事になります。

同じデュラエースでも43mm('76)、37.9mm(EX '87)、36.3mm(7400 '93)、37.6mm(7410 '93)と時代によってまちまちです。旧車ではヘッドパーツの錆びは必須といってよいほど見られますのでレストア時に交換したいものですが、ぴったり合うヘッドパーツにはなかなか巡り会えません。JISのノーマルサイズは旧製品が細々と販売されている程度ですので、先行きはきびしいものがあります。

以下にA+B寸法のデータをあげておきます。(年)はトモダ・ワールドカタログ掲載年です。

シマノヘッドパーツ

 パーツカタログなどの記載を集計しました。上記の表と一部違う部分も存在しますが、オリジナル資料の値を記載しております。

 

スタックハイトの謎

 謎という訳ではないのですが、以前より疑問に思うことがあります。1)レビンやRB-661など長年にわたって出ている製品は年代によって長さが違っている。2)掲載されている値と実測値が1mm以上違うことがある。3)そもそも掲載されている値はロックナットの先端までなのか、それともステアリングコラムが入る最大限の値なのか(ナット先端より1〜3mm短い)、公称値なのか実測値なのか。

 

 TGHC-1の2013年での公称値は下ワン10.45mm、上ワン23.45mmですが、数年前に購入したものを実際に測ってみると下ワンは10.5mmと良いものの、上ワンは27.0mmとかなり長くなっています。ロックナットの測定は端端でしていますので多少長くはなりますが、3.55mmとはちょっと長いですね。製品ムラか測定誤差でしょうか。

 以下に手持ちパーツの実測値を示しておきます。

 
ロックナット
A(除ロックナット)
合計
SHIMANO HP-7400
8.0
17.5
12.0
37.5
SUNTOUR SPRINT
12.0(含スペーサー)
17.0
14.0
43.0
NIKYO ULTIMA
9.0
16.4
13.0
38.4
TANGE RB-661
10.0
17.0
11.6
38.6
TANGE TGHC-1
10.0
17.0
10.5
37.5
CHIN HAUR
11.4
15.0
10.6
37.0
BS純正 GR-24G
9.2(含スペーサー)
15.5
10.5
35.2
BS純正 DT-6110
12.0(含スペーサー)
15.0
11.0
38.0
ロックナットは端端距離

BSのヘッドパーツは短い?

 NetでBS(特にユーラシア)のヘッドパーツは短いと書いてあるのを見かけますので、実際に測ってみました。DT-6110は専用の輪行ヘッドを使用しており、ヘッドチューブ長は115mm、コラム長は149mmですので、その差は34mmになります。

 

 上下ワンの長さが29.0mm、アウター受けの厚さが3.0mmで残り5.0mmが出ています(左)。ロックナット厚は9.0mmですので4.0mmが残り、写真で見てもこの程度が適正のようです。他のヘッドパーツも38mm前後で同じように見えますが、アウター受けの3.0mmを考慮すると純正ロックナットでは入らない物が出てきそうです。ロックナットを除くA+Bの値が26mmなのはBS純正とCHIN HAUR(最近GIANT用としてNetで販売されている台湾製)だけですので、短いと言えば短いのかもしれません。

 

 グランテックの場合はGR-24Gでヘッドチューブ長125mm、コラム長159mm、GR-27Hでヘッドチューブ長110mm、コラム長144mmとなっていて、ともに34mmの差となっています。これに35.2mmのヘッドパーツを組み込むのでネジ部ぎりぎりまでコラムが入るのですが(左)、何本かのコラム長を測っていると1.5mm程度の製品ムラが見られ、それに呼応するようにスペーサーも2.2mmから3.2mmへと太くなっていました(右)。グランテックのロックナットは専用のゴムをかぶせる構造のためか7.0mmと薄くなっています。そのため吻合部がシビアになり、製品ムラを吸収する意味でスペーサーで調整しているのではないかと思います。

 

アウター受け

 サイドプルやVブレーキでは問題ありませんが、カンティやセンタプルブレーキではヘッドパーツ内にアウター受けを挟み込みます。通常は3mm程度の厚さですが、ヘッドパーツのスタックハイトはこのパーツを考慮していませんので、該当する車体はステアリングコラムに3mm程度の余裕が必要になります。どうしても足りないと言う方向け?に、Diacompeの2.0mmなんて製品もあります。

 

 ロックナットは手持ちの物で実測してみると8mm(HP-7400)〜11.4mm(CHIN HAUR)まで差がありました。ロードでもマイクロアジャストでもネジ径はBC1×24T.P.Iで同じですので、長いロックナットを短い物に変える事によって3mm程度の余裕は捻出できそうです

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