ハブ

 最近ではシールドハブも出てきましたが、従来よりあるカップ&コーンのハブは上の図のように球押しが球を押す構造になっています。ハブは地味な部分ですが、走行時に常に回転している重要な部品です。定期的にグリスアップが必要なのですが気軽に分解する所でもなく、おざなりにしているとホイールごと交換するはめになったりします。ここでは種類から分解方法まで見てみたいと思います。

 

種類

フランジ

 スポークをつなぐ部分(フランジ)が大きいラージフランジ、小さなスモールフランジ、その中間のセミラージフランジがあります。構造は同じですが、ラージフランジの方がスポークが短くなって強いホイールができるとの事で、トラック車に採用されていました。またランドナーにも外見で採用されていましたが、最近ではトラック車もスモールフランジになり、ラージフランジは消えてしまいました。

 

引っ掛け式

 スポークはフランジの穴を通して引っ掛けてあり、リムを支えています。スポークが折れた場合は交換するのですが、リヤハブのフリー側ではフリー本体が邪魔になるので本体を外さねばなりません。しかし、ツアー中など旅先でのフリー外しは大変ですので、フランジの穴の一部に切れ込みを入れてスポークを引っ掛けるようにする「引っ掛け式」のリヤハブが出ていました(左)。これならフリー本体を外さなくても引っ掛けるだけでスポークの交換が出来ます。ただ、ラージフランジのハブではスプロケット外すだけで交換できますし(中)、見栄えの問題からか引っ掛け式は、普及グレードのスモールハブの一部に見られる程度でした。これも、フリーハブに移行してからはスプロケット外すだけで交換できますので(右)、最近では見なくなってしまいました。

 

ナット止めとクイック止め

 ハブの種類は大きく分けるとナット止め(左)とクイック止め(右)に分けられます。ナット止めは一般車によくある構造で、ナットで締めて止めます。シャフトは中空ではない鉄の棒(ソリッド)です。これに対してクイック止めはクイック機構で挟み込むようにして止めるため、シャフトは中空になっています。

 

 フレームは、ハブシャフトのナットから外に出ている部分に乗っかっています。ナット止め場合はシャフトが多少長くても問題ありませんが、クイック止めではその機構上エンドからはみ出してはいけないので、長さもオーバーロックナット寸法+8mm〜+11mm程度と、寸法を厳格に求められます。

 

 クイック止めはその構造上、フレームに接する部分の厚さが必要になりますので、フレームのエンドも5.0mm以上の厚さが求められます。ほとんどのスポーツ車は問題ありませんが、一般車など低価格帯のフレームには厚みの薄いプレスエンド(右)が採用されていますので、ナット止めをクイック止めに改造する場合は注意が必要です。詳細はリンク参照

 

インチネジとミリネジ

 シャフトのネジ規格はBC 5/16・3/8(インチネジ)とM9・M10(ミリネジ)の2種類があります。国産のクイック止めはミリネジのみですが、ナット止めは一般車用のインチネジとトラックやBMX用のミリネジの2種類があり、注意が必要です。相互互換性は無いので、ナットや球押しもシャフトのネジ規格にあわせたものが必要になります。詳細はリンク先参照

 

オーバーロックナット寸法(O.L.D)

 フレームに挟み込む部分の寸法をオーバーロックナット寸法(O.L.D)と呼びます。現在のロードではフロント100mm、リヤ130mmが標準ですが、昭和の時代はフロント93〜100mm、リヤ120〜126mmと各種出ていました。ナット止めに関しては各種出ていたようですが、クイック止めを採用していたスポーツ車はフロント100mm、リヤは5段が120mm、6段が126mmの事がほとんどでした。リヤハブは、同じ本体でスペーサーによってO.L.Dを調節している物がほとんどでしたので、組換えでO.L.D変更可能でした。詳細はリンク先参照

 

ボスフリー用ハブとフリーハブ

 リヤハブには、ボスフリーと勘合部で結合するハブとフリーと一体型になったフリーハブがあります。外見上はほとんど同じですが、フリーの構造に多少違いがあります。

 

 ボスフリーとフリーハブではフリーの構造は似ていますが、ハブの構造に違いがあります。ボスフリーと勘合するハブは、その構造上フリー側のボールがボスフリー本体より内側に来ますので、軸を支えるボールの位置が左右でアンバランスになります(左上)。これに比べてフリーハブはフリーがハブに一体化されているためフリー本体内にフリー側のボールを内蔵することができ、ボスフリーに比べて左右のボール位置のバランスが良くなります(左下)。右はデュラエースのO.L.D.126m用リヤハブシャフトですが、ボスハブの右側球押しがフリーハブに比べて内方にあるのが判ります(一番上)。ただ、フリーハブでも72Dura(EX)、73Dura(AX)と74Dura(NewDuraAce)では左の球押しの位置が変わっていますし、製品によってはボスフリーの位置に近いものもあるようです。ただ、カップ&コーンの構造は同じですので、分解・グリスアップも同じように行えます。分解時にシャフトを抜けばボスフリー用ハブかフリーハブかの区別ははっきり付きますが、見た目だけでは判りにくいので、詳細はリンク先を参照

 

ロックナット・球押し・ハブスパナ

 ハブの分解調整にはハブスパナと言う厚さ2mmの特殊なスパナが必要になります(左)。玉押しには2mm程度のスリットが付けてあり、このスリットにハブスパナを嵌め込んで分解調整します。13mm〜17mmまで色々サイズがありますが、たいていはフロントが13〜14mm、リヤが15〜16mmのことが多いです。

 

 普及品のロックナットは通常のナットですが(中)、クイック止めの上級グレードはロックナットもスリットタイプになっており(左)、ハブスパナが2枚必要になります。また、低グレードでは球押しもスリットではなくてダストキャップ兼用のナット形式の物もあります(右)。球押しは型番違うと交換性が無くなるうえに、旧製品の部品供給は無いに等しくてレストア時の障壁となっています。互換性などはリンク参照

 

分解方法

前輪

 スパナとレンチで外すのですが、玉押しの当たり部分は薄いスリット状なのでハブスパナのような特殊な工具が必要になります(左)。ナットと玉押しをすべて外して反対側からシャフトを抜きます(中)。この時ボールがこぼれ出てくるのでタオルを地面に敷いておくなどして、無くさないようにしてください(右)。

 

 ダストキャップを外します。昔は鉄製、少し新しくなるとプラスティック製の嵌め込みですが、専用のリムーバーなど存在せず、マイナスドライバーなどで抉るので、曲がったり割れたりします。ダストキャップは現行品でも簡単に手に入る部品ではなく、シリーズ間でも互換性の低い部品なのに、無くなると水やごみが入りまくるので実質使用不能になってしまう厄介な部品です。慎重を期して作業するのですが、結構強く嵌め込まれていたりして、鉄製の場合はたいていゆがませてしまいます。ゆがみくらいは良いですが、樹脂製は割れてしまうので、古いハブはかなり気を使います。固着していたり、自信が無ければ付けたまま作業するほうが良いかもしれません。清掃の作業効率は落ちますが、根気よく行えば仕上がりは同じです。

 

 パーツクリーナーなどで古いグリスを綺麗にとって清掃した後に、玉押しと本体ワンの状態を調べます。球の当たる部分に均一なラインが出ている程度では問題ありませんが、虫食いが発生していたら基本的には交換です。本体ワンは玉押しに比べて強く出来ているらしく虫食いは滅多に見ませんが、見かけたものは玉にサビが出ていたものでした。グリス切れよりサビの方が問題でやすいようですね。本体ワンに虫食いがあるようなホイールは状態の悪い物が多いので、ホイールごと破棄になります。

 

 グリスを詰めてから玉を並べ、ダストキャップにもグリスを詰めて均等に押し込みます(左)。シャフトを組み込む前に、既についているナットと玉押しをきつく締め込んでおきます(中)。シャフトを通して玉押しとナットを組付けますが、組付けはやや硬めにしておきます。これは走行すると多少緩んで最初からベストの調整だとガタが出るためで、調整後も100Km程度走行後に点検や再調整をお勧めします。また、ハブのナットと玉押し間は思いっきり締めないと緩むことがあります(右)。緩むとガタが発生して虫食いの原因となり、ハブ本体側に虫食いが発生すると最悪リムごと交換となります。

 

後輪

 ボスハブの場合は、ボスフリーを外した方が作業効率が飛躍的に上がります。付けたままでも出来ないことは無いですが、右のようにすごく奥まったところで作業しなければならなくなります。ボスフリーの抜き方はリンク参照

 

 玉押しとロックナットを外してシャフトを抜きます。フロントはどちら側を抜いても良いですが、リヤはフリーと反対側(左側)で抜きましょう(理由は後述)。シャフトを抜いてもグリスが残っていれば球は落ちませんが、たいていはグリスが減っていて球が落ちてきますので、ウエスなどで受け止めましょう。まあ、球を交換するなら捨てちゃっても良いのですが、虫食いチェックはしたいものですね。

 

 フリーハブの場合は、フリー側もダストシールのすぐ後ろに玉があるのでフロントと同じように作業が出来ます。ただ、ボスフリーと同じように、玉押しとナットを抜くのはフリーと反対側で行いましょう。ダストキャップも同じように外すのですが、プラスティック製が多いのと爪がきついものが多くて、破損しないように外すのに気を使います。

 

 フロントと同じように玉押しとワンをチェックしたらグリスを入れて玉を並べます。ダストキャップを嵌めてからシャフトを入れるのですが、その前に一仕事です。シャフトについている方の球押しとロックナットを強く締めこんでおきましょう(右)。フロントはさほど問題ありませんが、リヤのフリー側は点検が困難な上に、スペーサーが入って緩みやすい構造なので、この機会に締めこんでおきます。リヤの場合、まず玉押しとインナーロックナットを締め込み次に玉押しと外側のロックナットを締めこみます。レストア時に、緩々に緩んでいるリヤシャフトを何度も見かけましたが、これが本体ワン破損の一因になっていると思います。シャフトを入れたら玉押しとロックナットを嵌めて締め込みと調整を行って、フロンと同じように少し走ってから再調整します。

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