旧車レストア

 最近ではネットの発達でオークションや個人売買も盛んになり、旧車(70〜80年代のマスプロ車)をレストアされる方も多くなっているようです。特に台数が多く出ていたBSロードマンやユーラシアは人気のようですが、肝心の部品供給に関してはメーカーが無くなったり、規格が変わったりしてお寒い状態です。ここでは、マスプロ旧車の部品がどの程度共用できるか見てみたいと思います。
 なおここで言う旧車とは、1970年代後半から80年代にかけて出ていたBSや片倉など国産マスプロ車で、90年以降に出てきたカセットハブ、変速のINDEX化、Vブレーキの出現以前のものとさせていただきます。

 

準備編

フレーム

 車種としては、ロード、スポルティーフ、ランドナー、キャンピングなどの種類が出ていましたが、すべてホリゾンタル(トップチューブが水平)の前三角フレームでした。材質は混合物の違いによりマンガン-モリブデン(MnMo・レイノルズ531)、クロームモリブデン(CrMo・クロモリ)、ハイテンション鋼(HT・ハイテン)、普通鋼などの違いがありましたが、すべて「」でした。
 まずはフレームの規格から見てみましょう。

1.ホークステム
 外径は25.4mm、内径は22.2mで現在でも同じ規格です。外径にはヘッドパーツのロックリングが、内径にはハンドルステムが入りますが、同じ規格なので現在の部品が問題なく入ります。

2.ヘッドチューブ
 内径は30.0mmでここにはヘッドパーツが入ります。ヘッドパーツは多種出ていますが、旧車はノーマルサイズのノーマルヘッド(JIS)と言う物になります。ノーマルサイズでは30.2mmのENGLISH(イタリアン)サイズもありますが、マスプロ車には採用されてなかったと思います。
 ノーマルサイズ(JIS)は現在でも細々と販売されていますが、いつまであるかは不明です。また、ホークステムの長さによって使えるサイズが制限されますので(リンク参照)、予備部品に出会ったら確保しておきましょう。

3.シートチューブ
 外径は28.6mmで統一されており、バンド式のフロントディレーラならどのメーカーの物でも付きます(リンク参照)。まだ新品販売しているものの、最近の規格は31.8(一部は34.9mm)ですので、新規購入の場合は注意が必要です。
 内径は0.2mm刻みで色々なものが混在しますので、これに入るシートピラーの種類も25.0mmから0.2mm刻みであります。サイズは材質に依り、CrMoが26.6〜27.2、HTが26.2mmのものが多いですが(リンク参照)、絶対ではありません。現在では大口径化により31.6mm以上のものが主流となり、27.2mm以下のシートピラーは少量のみ生産されているようです。

4.ダウンチューブ
 外径は28.6mmでシートチューブと同じです。バンド止めのシフトレバーも統一サイズですので、どのメーカーの物でも入ります。ただし、最近はデュアルコントロールレバーが主流ですので、シフトレバーは直付けが極少量生産されている程度です。

5.エンドブラケット(リンク参照)
 最初はアダプターで対応していましたが、高級車から直付けのエンドブラケットに変わっていきました。ブラケットの形はリヤディレーラのメーカー毎に違うので互換性はなさそうなのですが、カンパとサンツアーは似ているので調整だけで入ったりします。また、当時のマスプロ車の多くが互換性の高いサンツアーエンドを採用していましたので、現在のディレーラも付きやすいです。

6.オーバーロックナット寸法(リンク参照)
 フロントは96mm(一部93mm)が後に100mmになり、リヤは5段変速が120mm(124mm)、6段変速が126mmでした。フロントは現在でも100mm幅なので現行製品が使用可能ですが、リヤの現行製品は130mm以上となっていますので、そのままでは使用できません。

7.ボトムブラケット(BB)
 BBのネジサイズはBSC(1.37"×24T)で統一されていて、ボスフリーと同じネジサイズです。他にイタリアンやフレンチ規格もありますが、マスプロ車には採用されていません。BB幅はほとんどが68mmですが、古いBS車の一部に70mmと言うのもあります。
 現在のBBはネジサイズ、BB幅(68mm)とも同じものの、シールド化されて勘合部も四角錘からオクタリンクに変更されているため、交換するならクランク、BBシャフト、BBワンのセットで交換になります。またチェンラインの問題もあり、ラインを無視してつけると変速しなかったり、チェーンが外れたりしますので、現行製品交換時の難点となっています。

 

逆ネジ

 使用されているネジのほとんどが正ネジ(時計方向に回すと締まる)ですが、3箇所だけ逆ネジ(時計方向に回すと緩む)があります。左ペダル、ボトムブラケットの右ワン(JIS)、ボスフリーの蓋の3箇所で、自転車を漕ぐ回転方向で緩まないために逆ネジになっているそうです。この3箇所のうち良く遭遇するのは左ペダルだけで、BBの右ワンは交換時以外は外しませんし、ボスフリーの蓋に至ってはあける必要はほとんどありません。

 

工具

 旧車レストアの基本は、分解、清掃、組立です。分解は通常メインテナンス以上の分解を行いますので、専用工具が必要になってきます。レストア時に必要な工具を見てみましょう。

 

汎用工具

 スパナ・ドライバー・レンチ:使用するサイズは8・9・10が主で、ハブ関係では13・14・16・17、ペダルが15mmです。6角レンチは6・5mmが主ですが、部品によっては4mm以下も必要になります。モンキーレンチやプライヤー、ハンマーも有れば便利です

 

専用工具

 専用工具は多種類有りますが、レストア時に必ず必要な物、交換時のみ必要な物、あれば便利な物など必要度が違っています。


レストア時に必ず必要な物

コッタレスクランク抜き

 コッタレスクランクをBBシャフトから抜く時に必要な物で、BBのグリスアップ時に必需品です。2種類有りますので、自分の自転車に合わせて購入してください。各社から出ており、\1,500前後で販売されています。詳細はリンク参照

チェーン切り

 チェーン清掃時は必要ありませんが、交換時の切断する時に必要ですし、レストア時はたいてい交換になります。各社から各種グレードと、携帯性を持たせたものなど色々出ていますが、安価な物は精度が悪くてPinの押し出しが垂直でなかったり、プレート押さえが強度不足で曲がったりするそうです。\500程度から有りますが、せめて\1,000以上の物のほうがよろしいと思います。

ハブスパナ

 上級グレードのハブはスリットのような切れ込みですので、2mm程度の薄さのハブスパナで作業します。ただし、安価なハブは外側の17mmナットが太いものなどあり、普通のスパナのほうが作業しやすい場合もあります。13×14、15×16セットで\1,000前後から有りますので、1セット持っておいても損は無いでしょう。詳細はリンク参照

フックスパナ

 BBの左ワンの着脱時に使用します。外すだけならマイナスドライバーでも出来ますが、組上げ調整時にはこれとカニ目レンチが無いと微調整しにくいです、と言うより出来ません。一般車用のヘッドパーツもこのフックで外しますが、ワンのカーブが違いますので注意してください。\1,000程度からあります。詳細はリンク参照

カニ目レンチ

 BBの組上げ調整時にフックスパナと使用して微調整を行います。ピンスパナでも代替できますが、カニ目レンチのほうが力をかけやすいです。数社から出ていて\1,000程度からあります。詳細はリンク参照

ヘッドスパナ

 32〜34mmナットがあるヘッドパーツ用工具です。レーシングタイプでは必需品ですが、マイクロアジャストタイプのヘッドパーツなら大きいモンキーレンチでも作業できます。メーカー品はスパナ1本で\2,500前後なので、使用頻度を考えると少し高価でしょうか。

タイヤレバー

 タイヤをリムから外す時に使用するレバー。マイナスドライバでも代用できそうだが、傷ついたりするのでお勧めしません。プラスティックや金属で出来ていて2〜3組で使用します。安いものですし、パンク修理の時にも必要ですので、持っていても損は無いでしょう。使用例はリンク参照。

交換時のみ必要な物

ボスフリー抜き

 今ではフリーハブ全盛ですが、当時はハブとフリーが分かれるボスフリー形式でした。レストア時にも抜く必要はありませんが、交換時には必要になります。各社、各モデルで専用の物が必要になりますので、種類をよく確かめてから購入してください。また、古いシマノの工具などは廃盤になっているものもあります。詳細はリンク参照

右ハンガーワン外し

 BBの右ワンを外す特殊工具です。これも通常整備時では外す必要なく、交換時のみワンを外すのに使用します。簡易用のスパナタイプと、確実に作業できるプロタイプがありますが、旧車レストア時でも外す機会は少ないところです。詳細はリンク参照

スプロケットリムーバー

 スプロケットをフリー本体から外す工具です。カセットフリーの場合はロックリングを外す時の固定用に1本使用しますが、Topギヤがネジ式のボスフリーでは2本使用してスプロケットを外します。ギヤを外さなくても清掃は出来ますのでスプロケット交換時のみ必要となりますが、Topギヤなどは良くチビて交換となりますので、結局必要となる工具です。使用方法はリンク参照
 専用工具の中では構造が単純なので、自作しやすい専用工具です。

ヘッドパーツ用工具

 分解・グリスアップ時にはヘッドスパナがあれば十分ですが、サビやワンの虫食いなどで交換するときには専用工具が必要です。ワンの着脱と球押しの着脱で4種類の特殊工具が必要となります。詳細はリンク参照

あれば便利な物

ワイヤーカッター

 インナーワイヤーとアウターケーブルを切る工具ですが、巻き込むように切ってくれるのでインナーは解れにくく、アウターは断面をつぶさずにカットしてくれます。ケーブルは消耗品で交換時には活躍しますので、自分で整備する人は持っておいても損は無いと思います。以前は結構値が張りましたが、最近では\1,000程度の物も出ているようですが性能は不明ですので、買うならメーカー品がよろしいかとは思います。

ペグスパナ

 チェーンリングボルトの空転止めに使用しますが、有れば便利と言うものです。反対側にクランクキャップ用のペグスパナが付いている物もあります。\500程度のものですので、持っていてもよいでしょう。

ペダルキャップスパナ

 最近ではクリートペダル全盛で、ペダルキャップなんて物はありませんが、昭和の時代のスポーツ車には防水、防塵用に各社独自のキャップが嵌っていました。プライヤーでも外せますが、プラスティック製では傷が付いたり割れたりしますし、装着する時も強く締めなければ走行時に取れてしまったりしますので、上級グレードでは専用のキャップスパナが用意されていました。詳細はリンク参照

ペダルレンチ

 ペダルは15mmスパナでも外せますが、力と雨がかかる所なのできつく締まっている事が多く、安いスパナなら折れたりする事があります。専用のレンチは柄も長くて使いやすいらしいのですが、私は普通のレンチでまだ困った事が無いので購入には至っていません。メーカー品は\2,000以上するので、使用回数を考えると少し考えてしまいますね(笑)。

振れ取り台

 リムの振れを取ったりホイールを組む時にあれば便利な専用工具、と言うより無いと非常に不便な工具。他の専用工具に比べると割安なためか、それともホイールを組めるのが輝かしいのか、結構な量の振れ取り台が世の中に流通している模様。ただし、頻回に使用する人はほとんどいないので、程度の良い中古がヤクオフなどで数多く流れており、私も定価の1/3程度で新品同様品をGetできました。写真は簡易品で、プロ用の重厚で高価な物もありますが一般人には必要ないでしょう。

ディレーラー直付けゲージ

 Rメカ台座修正ツール、エンド修正器などとも呼ばれており、ディレーラーの台座の検査と修正を行うツールです。専用工具の中では登場回数が多そうですが、ディレーラークラッシュしない限り通常使用では必要とならない工具です。中古フレームを購入したり、変速に不具合が無ければ、購入してまで検査・修正する必要も無いと思いますが、ディレーラーが不調になると、つい疑ってしまいます。私は中古フレームに数多くかかわるようになって購入してしまいました。棒状のものと箱状のものがありますが使い方は同じです。詳細はリンク参照

これ以下はプロ用工具ですので、必要な使用回数が少ない割には高価な工具です。作業はプロショップに任せたほうが無難でしょう

 

エンド矯正器

 エンド並行修正ツールなどとも呼ばれています。前後のフレームエンド(ハブが入る部分)が平行になっているかどうかを検査すると同時に、修正にも使える工具です。レストア1回に付き1回しか使用しない割には高い工具ですので、プロショップに頼んだ方が安上がりでしょう。また、検査だけならハブとの隙間を見ればおおよそ判ります。

フェイスカッター

 ヘッドチューブやBBチューブの接合面を綺麗に削って部品との結合精度を高める工具です。1度削ってしまえば2度はありませんので、これこそプロショップ用の工具です。古いレストアフレームや再塗装時などには効果があるそうですが、お金払って業者にしてもらうほうが確実ですし、削りすぎは禁物です。

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