玉押しの互換

リヤ

DuraAce(HS-831、H-831、HA-100・200、HB-7110・7120)

 70年代前半に出現してから90年代の7400まで20年余り、品番変更はありましたが同一構成で出ていました。防水キャップはEX以降のプラスチックと違って鉄製ですので経年変化に強く、古い製品でも使用できる一因となっています。また、このシリーズはラージフランジハブも出ていましたので、いまだに愛用者が多いようです。

 

DuraAce EX(FH-7250・7260)

 初代EXでデュラエースにおけるフリーハブの一号機です。フロントハブは旧デュラの防水キャップを変えた程度ですので、EXハブとしてはリヤハブが初作になります。登場時よりO.L.D.120mmの5段(FH-7250)とO.L.D.126mmの6段(FH-7260)がありましたが、さらにO.L.D.120mmの6段も存在しました。フリー本体は5段(#3-356 9002)、6段(#3-356 9003)と違うものの、ハブ本体は同じなので座金・スペーサーの増減やロックナット・玉押しの厚さを変えて対処していたようです。また、防水キャップはフロントと同じく左右別物になっています。
 1つのハブ本体で3種類のハブを作成するため、各パーツで薄めの物が作られています。スペーサーは4.0mm、玉押しは標準の15mmに比べて基部の短い13.5mmと10.0mm、ロックナットも7.5mmが4.0mmになり、舌付座金が変更になっています。部品構成から見てみると、6段時の右側部品構成は120・126mmともに同じですのでチェーンラインは変わりません。左側部品はSpacerを省き、LockNutを3.5mm減らすことで120mmとしていますので、本体は120mmの6段に耐えうる設計と言えそうです。120mmに6段が入るのはすばらしいですが、スポークの張りに無理がこないのか心配なところです。

 

DuraAce EX(FH-7261・7271)

 5段がなくなって6・7段構成となり、O.L.D.も126mmに統一されました。このハブはスペーサーの左右入れ替えだけで6・7段の変更ができますが、フリー本体は6段(#270 9003)、7段(#271 9004)と別物ですのでFH-7400-6.7ほど便利ではありません。部品構成はFH-7260(126mm)とほとんど同じですが、右は舌付座金が1枚増えて3枚となり、左の舌付座金は初代(#243 1600)のものが2枚入っています。

 

DuraAce AX(FH-7370)

 DuraAceAX初代の構成です。ワッシャを何枚も重ねて調整するEXハブに比べると、初代と同じく非常にシンプルになりましたが、ロックナットや防水座金、軸スペーサーなどは新製です。ただし、交換頻度の高い玉押しや、ハブ軸、舌付座金は初代と同じ物でした。品番で6段と7段の違いはフリー本体(6段:#3-271 9003、7段:#3-271 9004)だけですので、ハブ本体は共通のようです。

 

 左右のロックナットはAX専用品です。エアロ型になって本体カバーがエンド付近まで延びてきて、ロックナットもカバーにかかるようになった為、凹凸の無い円柱状になったようです。初代AXのFH-7370は左右でロックナットの形が違いますが、2代目は左右共同じ薄型のロックナットになっていました。軸スペーサーや防水座金もAXのみの専用品となっています。
 二次型は共通化を計ったためか、6・7段の構成も変わったようです。左右共ワッシャを数枚重ねて長さを稼いでいますが、入手した下記資料に不備が多くて詳細不明なので現時点では省略させていただきます。

New DuraAce(HB-7400-R)

 フリーハブの台頭により、HB-7400がデュラエース最後のボスハブとなったようです。防水キャップはプラスティックですが、グリスホールが付きました。ただ、実測外径は同じようなので、初代やEXのダストキャップも入るようです。ロックナットは品番が1つ増えましたがサイズは7.5mmと同じで、形もほとんど変わりません。玉押しはシールリング付き(矢印の間に2枚入る)になりましたが、玉当たり部分は同じようです(後述)。

 

New DuraAce(FH-7400-6/7)

 3代目フリーハブはボスハブと同じくシールリング付きの玉押しに変わっています。また、6段と7段を座金交換にて実現しているのはEXなどと同じですが、フリー本体と2ndスプロケットに細工をして、1つのフリーハブ本体で6段・7段両用できるようになっています。DustCapはボスハブと同じものです。

 

 防水キャップや左ロックナット、左玉押しはHB-7400と同じ物を使っています。右はシール付きのスペーサーを新製したため、玉押しも短い10mmの専用品になっています。右の薄型ロックナットはEXの物より品番が1番進んでいますが、左ロックナットと同じく仕上げが変わった程度で厚さは同じ4.0mmです。6段・7段変更はEXで使用していた1.6mm舌付座金を使いますが、全体調整用に2.9mmの半端なスペーサーも出来ていました。

以下にまとめてみました。

*:FH-7260(120mm)は左LockNutに#356 5900を使用 FH-7400-6.7の#360 1700はKeyWasher

 ハブ軸、ロックナットはシリーズ通して同じ物が使用されており、舌付座金も補助として厚みの違う物がEXやAX,FH-7400で使われていた程度です。

DustCap

 EXは内径にネジが切ってあったり、7400ではグリスホールが出来てたりしますが基本サイズは同じのようですので、代用は可能です(右)。ただし、微妙な摩擦で止まっていますので、何回も付け外しすると緩くなって外れやすくなってしまいます。



LockNut

 AXを除いてロックナットは7.5mmの#243 1700が使用されていますが、EXでは厚さを稼ぐために4mmに切り詰めた#356 5900が使用されています。7400になって#243 1701、#356 5901と品番が進みましたが、形と仕上げが多少違う程度で代用可能です。


Cone

 交換頻度の一番高い部品で、ここの互換性がハブレストアの鍵です。左コーンに使用されている#243 1500は7400でシールリングが付き#240 9811となりましたが、サイズは同じ15.0mmで玉当たり部分も同じなので代用できます(左)。HB-7400-Rに#243 1500を代用しましたが、問題なく収まっています(中)。EXでは幅の問題で13.5mmの#247 0400や10mmの#247 0402が出ていますが、実際は#243 1500の基部を詰めただけで玉当たり部分は同じようです(右)。
 
 ハブ軸、ロックナットや舌付座金は規格さえ合えば流用は可能ですが、玉押しだけは径や玉当たり部分のカーブなど、特殊要素があって代用の効きにくい製品です。ただし、上記で見るように初代から7400までの玉押しは代用が効きそうですので、程度の良い中古ハブを探し出してきて交換すればレストア可能です。出物がない場合や急ぐ場合はフロントと同じくHB-7600-Rの玉押しが代用できるかもしれません。規格はM10×15.0mmがY27898120、M10×13.5mmがY27898130で共にシールリング付きです(2015時点で\1,600前後)。こちらも現物見ていませんので確証はありませんが、お困りの時はご一考ください。

 

 最近、「Dura Ace AX用 137mm ハブセット」と称するハブセットを投売りしているNet業者がいました。AXと書いてあるせいか売れ残っていましたが、写真はどう見ても初代のハブセットでしたので数本まとめて買いましたら、やはり初代ハブセットでした。おかげでEXや7400ハブのレストアに役立ちましたが逆も成り立ちますので、今度は7400のハブセットを見かけたら買い占めておこうと思っております。

New DuraAce(FH-7402・7403)

 O.L.D.が130mmになった8速UG対応のFH-7402、8速HG対応のFH-7403です。ハブ軸の長さ以外でも、大型1枚のシールリングや防水キャップ、左右ロックナットも全て新製されており、FH-7400とは全くの別物になっています。
 フロントハブも大型シールリングの2次型が1994年に出ていますが、改造の方法から見てFH-7402に合わせて2次型フロントハブが出たのだと思います。なお、FH-7403はロックリング仕様ですので、右のダストキャップは蓋のような物に変更されています。

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