ボトムブラケットの専用工具

 最近では4角錐テーパーのBBシャフトなんて一般自転車くらいしか見ませんが、昭和の終わりごろのサイクリング車は4角錐テーパーのコッタレスクランクが標準でした。クランクの締結はボルト(ナット)を締めるだけですが、開放(抜く)は専用工具が必要になります。分解時に必要になる専用工具の種類と使用法を見てみましょう。

 

コッタレス抜き

 BBシャフトは2種類ありますので、専用工具もボルト用とナット用の2種類あります。

 

 ネジを外せばボルトかナットかはすぐ判りますが、工具購入前だとそうは行きません。キャップを外してボルト表面を良く見てください。ナットの下にツバがあったり、芯があって周囲にネジが見えればナット式です。ボルト式の場合は頭がツルッとしています。

 

ボルト式用コッタレス抜き

 ボルト式は工具で押さえる部分が工具結合面よりさらに5mmほど奥にあるため(右)、工具もあまり引っ込みません。それとボルトのネジ部を痛めないように、接合面は空転するようにできています。なお、工具ねじ込み部の径とピッチは全メーカー統一規格なのでクランクと工具のメーカー組み合わせは自由です。

 

ナット式用コッタレス抜き

 ナット式はBBシャフトからボルト部が11mmほど出ており(右)、工具はこのボルトの上部を押すため工具結合面よりかなり手前で押せるように、工具内へ大きく引き込めます、と言うより引き抜けます。工具の結合面で考えると、ボルト式は結合面よりかなり奥で、ナット式はかなり手前で押すように設計されていますので、お互いの使いまわしは少し難しいようです(ワッシャを噛ましたり、直でねじ込めば出来ないわけではないが、不具合が出ても自己責任で)。

 

 現在入手できるコッタレス抜きは、ボルト式ではシマノ(TL-FC10)やスギノ・MAXY(#203B)などがありますが、ナット式はスギノ・MAXY(#203N)くらいでしょうか。

 

ボルト・ナットのサイズ

 ナットのサイズは14mmですが、ボルトは14mmと15mmの2種類あります(左)。専用工具の反対側は14mmのBoxになっていますので(中)、これを使用してボルト(ナット)を外せますが、15mmの場合は専用工具などで外します(右)。

 

カニ目レンチ

 左ワンの分解組立、調整に使用します。私はSUGINOのBBツールセットに付いていたカニ目レンチ(穴間距離29.0mm、Pin径2.8mm)を使用していますが、パークツールHCW-4 ヘッドスパナにもSUGINOと同じ規格(幅29mm、Pin径2.3mm)の物が付いています。VIVAから出ていたフリーキャップ外し(中)の両側にも2種類の長さ(29.5mm・30.5mm、Pin径2.2mm)のカニ目レンチがありましたが、ピンスパナなどでも代用できます。また、ワンの片方が可動して調整できるタイプ(IceToolz 11A0)も出ています(右)。

 

 ワンのネジ山やピッチは、JIS仕様なら互換性ありますが穴の距離や大きさは微妙に違っていました。標準的なSUGINOのワンですが(左)、6穴開いていて穴間距離は29mm、穴幅3.0mmでSUGINOのカニ目レンチにちょうど入ります。SUGINOのOEMなのでしょうか、SAKAEのワンも同規格でした。

 

 シマノは4穴や6穴がありSUGINOとよく似ていますが、穴間距離は1mm弱大きくて、SUGINOのカニ目レンチは僅かに入りません。ただ、精度の問題でしょうか、3箇所のうち1箇所だけSUGINOのレンチが入る物、VIVAの細いPin径なら入るものなど精度はかなり緩いようです(右)。

 

 BB幅70mm時代のブリヂストン車には左右共2穴のワンがありました。穴間距離27.5mm、穴径4.0mmでこれもSUGINOのカニ目レンチは入りません。ただ、穴径は大きいので、回す方向の先のレンチPinを1つ外してBBシャフトに当てれば着脱は可能です。ピンスパナも使用できますが、右ワンなど固く締まっている所はカニ目レンチのほうが力が入りやすいです。

 

フックスパナ

 左ワンロックリングの分解組立、調整に使用します。右ワン用スパナの反対側にも付いていますが、左右に違う径の付いたスパナ(HOZAN C-205)もあります。ロックリング径は44mm〜46mmと多少ばらつきがありますが、少しの隙間が出ても使用には問題ありません。フックスパナは自転車専用工具ではないので各種出ていますから、径が45mm前後の物を選んでください。

 

 HOZAN C-205は湾曲が2種あり、急な方は一般車のヘッドパーツに(左)、緩い方はBBに使用します。汎用なので多少隙間は開きますが、使用に問題はありません(中)。SUGINOの工具はBB用に適正化されているようで、45mmのロックリングにピッタリと合います(右)。

 

右ワンまわし

 右ワンは逆ネジの上にきつく締まっている事が多いので専用工具で外します。プロ用工具(HOZAN C-358)ならガッチリはさめるのですが、高価であまり使用しない工具なので、私は板スパナを使っています。昔はSUGINOからBBツールセット(左)として出ていたのですが販売終了になり、現在ではパークツールから(HCW-4 ヘッドスパナ)が出ています。整備だけなら外さずにグリスアップ出来ますので工具の使用は交換時のみですが、右ワンが虫食いで交換になるのは希ですので使用頻度の少ない専用工具です。

 

空転止めスパナ(ペグスパナ)

 チェンリングボルトの空転を防ぐ工具なのですが、シマノのTL-FC20は反対側に16.8mm間のPinスパナがが付いています。これがワンキーリリースの穴にちょうど合いますので、設置時には必需品です。最近ではクランクキャップも大きなスリットから同様の穴に変更して、以前より防水性を高めているようです。TL-FC20は廃盤になりましたが、少し長くなったTL-FC21が今でもシマノから販売されています。

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