ボトムブラケットの分解組立

 最近のシールドBBなら付け外しだけで簡単ですが、カップ&コーン形式は分解、グリスアップ、組立調整、そして増し締めなど手が掛かります。

クランクの抜き方

 まずはクランクキャップを外します。嵌め込み式はマイナスドライバーで(左)、ネジ式は厚めのスリットが切ってありますので硬貨などで外してください(中)。ただし、レストアするような古くて未整備な車体のキャップは往々にして頑固にこびりついています。材質はプラスティックがほとんどですので、素直に外れなければバリバリと割って取ってください(右)。完全に取りきらないと専用工具が嵌りませんので、破片を残さず綺麗に取り去ってください。

 

 正ネジのボルトが抜けたら専用工具をクランクへ手でねじ込んでいきますが(中)、ねじ込む前に工具の中心部を緩めて引いておいてください。ネジ山は共通なので国産でしたらどのクランクでも嵌るはずですが、山が浅くてナメやすいのでしっかりと最後までねじ込みます。レストア時はサビや汚れが多くてねじ込みが浅くなりがちですので、歯ブラシとパーツクリーナーを使用して丁寧にごみを取り除いてください。手でねじ込めないほど硬い場合は、工具で無理に締めこまず汚れを綺麗にとってから5-56などを吹き付けて、再度手で締めてみてください。工具で無理に締めこんでいきますと、たいていはネジ山を舐めますし、ねじ込みが甘いとBBシャフトを押すときに締結力に負けてねじ山を損傷することがあります。ねじ山損傷したクランクは締結できても外せないので破棄するしかありません。

 

 工具の中心部をねじ込んで押込み、BBシャフトを押し出してシャフトをクランクから外します。専用工具をしっかりねじ込んだ後に(左)、工具の本体とシャフトにスパナをかけてシャフトを時計方向にネジってBBシャフトを押し出します(中)。押し出すときは一瞬で押し出せますが、レストア時は固着していることが多いので、ゆっくり力をかけてください。

 

BBワンの外し方

 クランクが抜けたら次に左ワンを外します。左ワンは本体をロックリング(正ネジ)で止めている構造なので、まずはロックリングを外します。ロックリングはマイナスドライバーで叩いても外れますが傷が付きますし、組込み時の微妙な調整は出来ませんので、フックスパナなどの専用工具を購入するほうが無難です。

 

 ロックリングが外れたら左ワンは手で回して外せます。外れにくい場合プライヤーなどは使用せずに、カニ目レンチなどで外した方がネジ山をつぶさないためにも無難でしょう。外れたら清掃して虫食いが無いか調べます。虫食いがあれば交換ですが、リテーナーは現在でも入手可能なもののBBシャフトは合うサイズが有るかどうかは微妙です。BBシャフトの種類やサイズはリンク先を参照

 

 右ワンはすぐ外さずに、まずは左からウエスをいれて清掃し、懐中電灯で点検してみてください。左ワンやBBシャフトに虫食いが無ければ右ワンはたいてい正常ですので、ゆるみなどが無ければ外さずに清掃だけするほうが無難です。手で触ってみてザラザラ感が無ければ大丈夫と思います。

 

 虫食いがあったり、交換したりするときは仕方が無いので外しましょう。右ワンは逆ネジで、分解は専用工具を使用します。プロ用なら作業は確実ですが、高価であまり使用しない工具なので私は専用の板スパナを使っています。ネジは逆ネジなので板スパナを掛けて時計回りに回すと緩みますが、結構硬く締まっている物が多いのと、板スパナが滑りやすくて力が入りにくいなどの問題があります。右ワンは約36mm幅のスパナサイズですので、モンキーレンチや36mmオーバーサイズ用ヘッドスパナでも作業できそうな気がしますが、非常に硬く締まっている事が多いので、専用工具以外で作業はしないほうが無難です。

 

 板スパナの滑り止めとして、左ワンを使用して工具を押さえる事も出来るようです。ただし、ワンの厚み(B)が16〜18mm程度に対して、右突出し距離(C)はダブル用BBでも22mm以上あり、すんなりと左写真のようには行きません。BBシャフトを左右逆転して付けた場合、Aの距離はTAやプロダイなど突出しの短い物なら17mm程度で何とか行けそうですが、MAXYなど国産のほとんどは20mm以上有りますので少し足りません。結局、Cの距離が短いシングルギヤならいざ知らず、ダブルギヤ以上ではスペーサーなどを噛まさないと出来ないようです。

 

 ほとんどのBBワンは上記のような物ですが、70年代でBB幅が70mmの頃のBS車には左右共2穴ワンのものがありました。ただ、形が違うだけでネジ山やピッチなどは同じですので、他社への交換は自由です。外し方は左右共カニ目レンチなどでまわして外すだけで、右ワンが逆ネジなのも同じです

 

BBの組付け

 組付けは右ワン、BB、左ワンの順で行います。ワンを入れる前に薄くグリスを塗っておくと、次回作業がスムーズに行きます。ワンの締付トルクは左右共700〜800Kgf・cm.(600-690 in.lbs.)だそうです(Shimano)。球はリテーナーの事が多いのですが、両ワンともリテーナーのツバがあるほうを必ず内向きにして下さい(中)。逆に入れても入りはしますが、ツバがワンに当たってリテーナーとワンが破壊されます(右)。ただし、シマノのリテーナーは汎用と多少形が違うので要注意です。高速回転するところでもなく、水が浸入しやすくて、頻回のグリスアップも望めませんので、グリスは硬めで防水効果の高そうな物を使用しています。

 

 左ワンは手でねじ込める所までねじ込んでからロックリングを嵌めて、フックスパナとカニ目レンチで球当たりを調節します。球当たりの調整は気に入るまでやり直しですが、ハブよりは高速に回転しなくて頻回にグリスアップも出来ないので、やや重めに設定しています。

 

 クランクを嵌め込み、ボルト(ナット)を締めこみます。締込みトルクは300〜450Kgf・cm.(260-390 in.lbs.)で行ってください。キャップを付ければ完成ですがここで問題です。昭和の時代のクランク材質は柔らかかったのでしょうか、クラブ時代に、ナットを心ゆくまで締めこんだ先輩のクランクが内方に寄っていたのを見たことがあります。左クランクはさほど問題になりませんが、右クランクではチェンラインが内方に動いて変速などに影響が出そうです。かといって、締め込みを甘くすると緩む事が多く、緩んだままで使用してテーパーを舐めた先輩も見ました。結局硬めに締めた後に何回か点検と増し締めするのが良いのでしょうね。

inserted by FC2 system